コラム

PIIGS、STUPIDの次はベトナム?

2010年02月25日(木)11時30分

「豚=PIIGS」の次は「馬鹿(STUPID)」――ギリシャの財政危機をきっかけに、デフォルト(債務不履行)リスクの高い国々の頭文字を並べて作った蔑称だ。PIIGSはポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、STUPIDはスペイン、トルコ、イギリス、ポルトガル、イタリア、ドバイ。2月中旬に頂点に達したギリシャ発のユーロ危機は、EU(欧州連合)がギリシャの支援を決めたことでいったん収まった。だがこれで、世界が「政府債務危機」という新しい火種をかかえていることが誰の目にも明らかになった。世界経済はようやく回復に向かっている、と思ったのは時期尚早だったようだ。

問題はPIIGSやSTUPIDにとどまらない。シンガポールの投資リポート「テマセク・ヘッジ」は2月10日、「ギリシャの次はベトナムだ」と警告した。「ギリシャは1月。もう遠い過去の話だ。今われわれが直面しているのは、アジア版のギリシャ悲劇かもしれない」

BRICsに次ぐ有望新興市場として日本でも07年に投資ブームを巻き起こしたベトナムは、テマセク・ヘッジが引用したアジア・タイムズの記事によると、インフレと貿易赤字の増大に悩み、実力以上に高い通貨を必死で支えている状態だ。通貨ドンの公定レートがドルに対して高すぎるため、輸出企業は輸出で稼いだドルをドンに換えたがらない。中央銀行は昨年11月にドンを5%切り下げたが、それでも闇市場での実勢レートと比べるとまだまだ高い。ドンを売って金に換えようとする動きを阻止するために、金取引も停止した。1月にドル建て国債を発行したときは、リスクを反映して高い金利を支払わされた

ベトナム政府は世界的な景気後退を跳ね返し年5・5%のGDP(国内総生産)成長を維持するために、GDPの8%という大規模な景気刺激策を打ち出した。そのツケが、回ってきている。幸いアジア経済危機の時のタイなどと違って対外債務はまだそれほど大きくないが、ギリシャ危機以降カントリー・リスクに敏感になった投資家は、ベトナムが政治的圧力に負けずに財政規律をどう建て直すかを注視しているという。

とても他人事とは思えない話だ。

金融危機を予測したことで有名なニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授は「ギリシャの財政危機は、グローバル氷山の一角に過ぎない」と、次のように予測する:次に待つのは国家のデフォルト危機、それも、銀行救済で巨額の財政赤字を積み上げた先進国の危機だ。

――編集部・千葉香代子

このブログの他の記事も読む

 超銀河系セックスって何だ!?

 裏切りと因縁と偽パスポート

 キャメロン監督が描く「ヒロシマ」とは

 カラチ・コネクション

プロフィール

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物は2週間ぶり高値維持、米利下げ観測や地政学

ビジネス

仏成長率、今年は少なくとも0.8%に 政府予想超え

ワールド

トランプ氏、ネトフリのWBD資産買収に介入示唆 市

ビジネス

米政権の戦略産業出資計画、防衛大手には適用されず=
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story