コラム

韓国を悩ます「雇用なき経済成長」

2010年02月26日(金)11時30分

本誌2月24日号でも伝えているとおり、現代やサムスン、LGといった輸出企業の好調さを背景に、韓国は先進国中いち早く不況から抜け出し、今年OECD(経済協力開発機構)に加盟する30カ国で最高の4・4%の経済成長を遂げると見込まれている。

しかし他の先進国同様、雇用情勢は改善していない。韓国統計庁が2月10日に発表した今年1月の雇用統計では、失業者が昨年1月と比べて36万8000人増え、121万人を越えた。2002年2月以来、10年ぶりの高水準だという。失業率は5・0%に達し、これも2001年3月以来の高い数字だ。

韓国統計庁は、「政府の雇用対策の実施を受けて、これまで求職活動をしていなかった主婦や退職者が、1月になって求職活動を始めたため」と説明し、急激に雇用情勢が悪化したわけではないと主張する。ところが同時に発表された「経済的に非活動」な人口も昨年1月より0・9%多い1630万人に増加していて、統計庁の主張と矛盾する。

どうやら失業率悪化の原因は雇用のミスマッチにありそうだ。輸出が好調な製造業は17万4000人、サービス業は2万9000人、それぞれ正規雇用を増やしている。その一方で農業従事者は16万人、建設業では8万1000人がそれぞれ職を失っている。農業や建設業の失業者が、製造業とサービス業の雇用増を相殺してしまったかたちだ。

 きのうまで農業をしていた人が明日からIT技術者になるのは無理な話し。「CEO大統領」として経済の国際化、自由化に積極的に取り組み、成果も出しつつある李明博大統領だが、雇用のミスマッチだけは思い通りにならないようだ。

――編集部・知久敏之

このブログの他の記事も読む

 PIIGS、STUPIDの次はベトナム?

 超銀河系セックスって何だ!?

 裏切りと因縁と偽パスポート

 キャメロン監督が描く「ヒロシマ」とは

プロフィール

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら

ビジネス

米国株式市場=ナスダック5日連続で最高値更新、アド
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名が海水浴中に手足を失う重症【衝撃現場の動画付き】

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 6

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 7

    「これが野生だ...」ワニがサメを捕食...カメラがと…

  • 8

    ウクライナ軍がロシアのSu-25戦闘機を撃墜...ドネツ…

  • 9

    この10年で日本人の生活苦はより深刻化している

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story