コラム

ベラルーシがロシアに協力的な5つの理由──「強いソ連」に憧れる崖っぷちの独裁者

2022年03月03日(木)20時05分

ルカシェンコにとって大きな問題は、こうした極右の抗議活動にロシア人も混じっていることだ。ルカシェンコは2020年1月、「政情不安を画策する外国人を逮捕した」と発表した。これはロシアのワーグナー・グループ(白人極右団体で傭兵集団でもある)メンバー33人だった。

ロシアは工作活動を否定している。

しかし、先述のように、ロシアとの関係にすきま風が目立つなか、ルカシェンコが欧米との関係改善に着手してきたことを思い起こせば、これまでにないほどのベラルーシの混乱に乗じてロシアが干渉しても不思議ではない。それは「裏切ったり、足を引っぱったりするなら潰す」というルカシェンコへの圧力になる。

ロシアには「ルカシェンコがいなくなってもベラルーシはロシア寄りにならざるを得ない」という目算があるとみられる。

こうして崖っぷちの「独裁者」はロシアの顔色をうかがい、ウクライナ侵攻に手を貸さざるを得ないわけだが、それは結果的に欧米からの圧力をさらに強め、ルカシェンコはますます崖っぷちに追いやられることになる。

歴史を振り返ると、「独裁者」がいなくなった後に底なしの混乱に陥ることは珍しくない。ウクライナ侵攻はベラルーシの今後をも左右しかねないのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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