コラム

中国、日本、ドイツ...2026年の各国経済の成長を左右するのは「あの政策」の有無

2025年12月24日(水)17時55分

デフレが続く中国、習政権は市場経済への不信感を強めている

こうした筆者の懸念が杞憂に終わり、家計の所得を底上げして、個人消費の拡大を伴う自律的な経済成長が2026年に実現するだろうか。

そのためには、高市政権の高い支持率が続くことが前提になるだろう。高市政権の政権基盤が強まり、経済成長を高める方向に金融財政政策が一体的かつ拡張的に作用する可能性が出てくる。そうなれば、コロナ禍収束に伴うリベンジ消費に支えられ1%台半ばだった2022年以来の高い経済成長が、2026年に実現する。ただ、現時点で判明している財政政策を踏まえれば、これはアップサイドシナリオだろう。

また、経済政策運営において、最も期待できない経済大国は引き続き中国と筆者は考えている。中国との政治的なディールを考えているトランプ政権による関税引き上げは限定的だが、一方で2025年も中国ではデフレを伴う経済停滞が続いている。

政府の名目税収がほとんど増えていない中で、5%とされている政府の公式統計ほどには、実際には経済成長が実現していないのが実情だろう。

習近平国家主席は圧倒的な権力を有している模様だが、同氏は政治体制の安定そして「台湾問題の克服」を最重視しているとみられる。一方で、米国への対抗意識を強める中で、市場経済への不信感をより強めており、自国の経済成長率を高める意志はますます衰えているようにみえる。

こうした政治リーダーに対する忖度が強いため、結局、金融財政政策は拡張的には作用しないだろう。長期デフレに陥った1990年代以降の日本と同様の、経済官僚による経済政策の機能不全が起きていると筆者は位置付けている。

本稿が本年最終のコラムとなります。来年も引き続きどうぞ宜しくお願いします。良い年末年始をお迎えください。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

【関連記事】
「国土強靭化」「競争力回復」「デジタル化」名目に注意...高市政権下で成長が止まるのはどんな場合か
習近平政権が反「内巻き政策」を続けても、中国のデフレは続く
ドイツに訪れる「アベノミクスと同様」の大変化、日本が抜け出せない「緊縮病の宿痾」

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU・仏・独が米国非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story