コラム

日本から学ばず、デフレ・経済停滞から抜け出せなそうな中国

2024年12月12日(木)06時30分

2017年から米中関係が冷え込み、更にコロナ禍の混乱を経て中国がより内向きになったこともあり、中国経済の実像を知ることは年々難しくなっている。金融市場における中国への期待が低下する中、筆者自身も中国経済の動向を観察する機会が減り、解像度が高い分析は正直難しい。

このため、先の報道が伝える共産党指導部のメッセージが、実効性がある政策発動を意味するのか、筆者には判断がつかない。2022年から習近平体制がより強固になったようにみえるが、コロナ禍からの正常化が進む中で、当局が公表する同国の経済成長率は5%前後を保っている。

経済成長は安定しているようにみえるが、同国のインフレ率停滞はかなり顕著である。エネルギー、食料品を除いたコアベースの消費者物価は2023年から概ね1%以下で推移している。

消費者物価指数の測定バイアスを踏まえると、物価下落つまりデフレに陥っている。実際に、名目GDPと実質GDPの差から算出される、GDPデフレーターは2023年半ばからマイナスとなっており、2012年までの日本経済と同様に「名目逆転」が定着しつつある。

デフレを放置した日本銀行のように、多くの官僚組織は問題を抱える

1990年代半ばから日本では20年以上デフレと経済停滞が続いたが、中国は同様の経済状況で、米国との関税引き上げ合戦という「切り合い」に再び直面する。もちろん、中国経済の苦境が避けられないわけではなく、2013年以降の日本のように、標準的な経済理論に基づき金融財政政策がしっかり作用すれば、経済停滞は回避できる。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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