コラム

ヌーベルバーグを議論する黒沢清たちを横目に麻雀ばっかりやっていた......そんな僕の『勝手にしやがれ』体験

2025年07月17日(木)18時23分

撃たれて絶命寸前のミシェルがつぶやく「本当に最低だ」を受けて、いきなりカメラ目線になって「最低って何のこと?」とパトリシアが言う有名なラストシーンも含めて、リアルな演技や自然な編集をゴダールはことさらのように否定する。ドヤ顔がちらつく。結論。僕はこの「意味ありげ」が嫌なのだ。

ピカソやシャガールの絵を見て、さっぱり分からないとぼやく人がいたら、意味など考えずに感じればいいのにと誰だって思うはずだ。それは分かる。僕もピカソやシャガールは大好きだ。でも僕は、映画館では絵画ではなく映画を観たいのだ。



newsweekjp_20250715084426.png勝手にしやがれ』(1960年)
©1960 STUDIOCANALーSoーciete Nouvelle de CinematographieーALL RIGHTS RESERVED.
監督/ジャンリュック・ゴダール
出演/ジャンポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ


<本誌2025年7月22日号掲載>

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プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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