コラム

老人自ら死を選択する映画『PLAN 75』で考えたこと

2023年03月20日(月)20時45分

ラストの長回しや仕切り入りのベンチのシーンなども含めて、プロットとは別の位相のディテールに早川千絵監督のこだわりは感じる。今さら書くまでもないけれど映画はディテールだ。ミチを演じる倍賞千恵子だけではなく高齢な俳優たちの自然な演技と相まって、そのディテールの積み重ねは成功している。

でもやっぱり足りない。全部寸止めなのだ。残念。

見ながら気付く。ヒロムの役回りは、アウシュビッツで同胞のユダヤ人虐殺に加担したゾンダーコマンドだ。なぜなら年を取らない人はいない。誰もがたどる道。

特に若い世代に言いたい。本当だよ。あっという間だからね。

magmori230320_752.jpg『PLAN 75』(2022年)
©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
監督/早川千絵
出演/倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実

<本誌2023年3月21日/28日合併号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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