様式美がクセになる『男はつらいよ』シリーズの不器用で切ない例外

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<旅先で出会ったマドンナに寅次郎が恋心を抱き、相手もまた信頼を寄せる。それでも最後にはマドンナの恋人が現れ、傷心の寅次郎は再び旅に出る──ストーリーは基本的に毎回同じだが>
タコ社長が大好きだ。旅から帰ってきた車寅次郎が、おいちゃんやおばちゃん、さくらや博たちと、とらやの奥の居間で日本酒を飲みながらだんらんするとき、タコ社長が現れてくれないと物足りない。
裏から登場するときはほぼ必ず、いないはずの寅次郎の悪口を大声で言いながら現れる。居間に座っている寅次郎に気付いたタコ社長は大慌てして、おいちゃんたちはやれやれと諦め顔。怒った寅次郎から最後には「このタコ」と頭をたたかれる。まさしく様式美だ。
ようやく登場しても、タコ社長はめったに居間に上がらない。たたかれた頭をさすりながら上がり框(かまち)に腰を掛けた姿勢のまま、車家のだんらんに参加する。そのさりげない慎ましさが切なくていとおしい。テレビドラマ時代を経て映画『男はつらいよ』シリーズが始まったのは1969年。僕はその当時は観ていない。大学で映研に所属した頃も、盆と正月に上映される『男はつらいよ』をわざわざ映画館に観に行こうとは思わなかった。だって学生は貧乏だ。時おりテレビでも放送される『男はつらいよ』を観るならば、まず放送されない藤田敏八(ふじたとしや)や神代辰巳(くましろたつみ) 、ルイ・マルやサム・ペキンパーを選んだはずだ。
ただし1回だけ、正月に友人に誘われて観た記憶がある。ストーリーはほぼ覚えていない。マドンナ役は木の実ナナだったような気がする。
つまり本格的に観始めたのは最近だ。シリーズは全50作。もちろん全部は観ていない。でもコンプリートしたと言う友人は少なくない。様式美にはまるのだろうか。
ストーリーは基本的には毎回同じ。旅先で出会ったマドンナに寅次郎は恋心を抱く。マドンナも寅次郎に対して信頼を寄せる(決して恋心ではない)。やがて寅次郎は旅を終えて柴又に戻り、マドンナとの関係は寅次郎の片思いのまま。紆余曲折あるが、最後にはマドンナの恋人が現れて、傷心の寅次郎は再び旅に出る。時にはマドンナのほうが積極的になるが、この場合は寅次郎が逃げ腰になって、自ら身を引くことがルーティンとなっている。
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