コラム

2024年のK-POPを総決算 1年を振り返って実感するアーティストたちの「自信と貫禄」

2024年12月25日(水)20時10分

シティポップ旋風が少し落ち着きはじめたのを見計らうように登場したイージーリスニングは、具体的に音の組み立てがどうのこうのと語れるわけではなく、むしろ制作サイドの姿勢と言ったほうが的確である。この方面では、BOYNEXTDOORが秋にリリースした「Nice Guy」が典型的な例で、「ラテン風だけど本格的にアプローチしているわけではなく、心地よさを追求しただけ」と言わんばかり。この雰囲気重視で楽曲を作るのが、2024年のトレンドのひとつになっている。


ZICOが手掛けたボーイズグループとして登場したBOYNEXTDOORは2024年、日本デビューを果たすなどの活躍を見せた。 

全世界的なムーブメントで韓国でも盛り上がっているのが、レトロなサウンドメイクである。これは数年前から見られた現象だが、NewJeansの活躍のおかげでさらに目立ってきた印象が強い。ここ最近は80年代~90年代に流行ったジャンルが受けているようで、"ハウス"を取り入れたRIIZE「Impossible」やNCT DREAM「When I'm With You」、大御所のチョー・ヨンピルが「Feeling Of You」を発表した2023年あたりから急増した"エレポップ"では、TOMORROW X TOGETHER「Love Story」、"ドラムンベース"だとNewJeans「Right Now」、tripleS「Untitled」といった具合に、例をあげれば切りがない。


NCT DREAMは2024年ミニアルバム「DREAM( )SCAPE」、フルアルバム「DREAMSCAPE」、日本オリジナルシングル「Moonlight」に加えて、「Rains in Heaven」でアメリカでもシングルをリリースした。 

バンドサウンドが人気に

バンドサウンドも2024年のK-POPシーンを語る上で外せないほど、たくさんの人に愛された。メンバー全員が兵役を終えて、再び本格的に活動を開始したDAY6は、常にヒットチャートの上位にいるほどの人気ぶり。彼らの場合は、一部のメンバーが軍隊にいる時期に行った公演が評判を呼び、復帰後の大ブレイクにつながったわけだが、それを差し引いても、これだけ売れたのは、ひとえにサウンドの良さと言えるだろう。


DAY6はミニアルバム「Fourever」の収録曲「HAPPY」が韓国の大手配信サイトMelOnの9・10月の月間チャート1位を獲得するヒットとなった。 


この方面でもう1組押さえておきたいのが、前回のコラムでも紹介した女性4人組のQWER。日本の4コマ漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』やアニメ『推しの子』にインスパイアされて始めた企画から登場したバンドで、デビューから程なくしてスターダムへ。「悩み中毒」「私の名前は晴れ」といった、日本のアイドルが歌うような明るく元気なナンバーをバンド演奏する様子が、韓国の若いリスナーを中心に歓迎されたのは想像に難くない。


QWERは「バンドサウンド」と「J-POPの影響」という2024年のK-POPトレンドを代表するようなサウンドが特徴的だ。 

プロフィール

まつもとたくお

音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を始め、数々の専門誌・ウェブメディアに寄稿。2012年にはK-POP専門レーベル〈バンチョーレコード〉を立ち上げ、イ・ハンチョルやソヒといった実力派を紹介した。現在は『韓流ぴあ』『ジャズ批評』『ハングルッ! ナビ』などで連載。LOVE FMLuckyFM楽天ポッドキャストの番組に出演中。著書は『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)ほか。

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