コラム

EVから自動運転へ飛躍する中国の自動車産業

2021年11月11日(木)18時48分

また、この車の組み立てはカナダの自動車部品メーカー、マグナとの合弁企業で行われている。"CASE"の進展に伴って、自動車もパソコンのようにブランドメーカー、基幹部品メーカー、製造受託会社の分業によって作られる方向に転換しそうだ。

ファーウェイはこのほか国有自動車メーカーの長安汽車や広州汽車とも「ファーウェイ・インサイド」方式の提携をしている。

また、ネット検索大手の百度は2013年から自動車メーカーと組んで自動運転の実用化試験を続けている。今年7月には前述の北京藍谷極狐汽車(Arcfox)のEVに自動運転システムを搭載した「アポロ・ムーン」を開発した。この車は運転手が介入しなくても運転の全プロセスを自動でできる「レベル4」(注)の自動運転が可能であるが、1台あたりのコストは48万元(820万円)と、このレベルの自動運転車の平均に比べて3分の1のお値段だとのこと。

(注)中国でいう「レベル4」(システムがすべての運転操作をするが、運転手に反応を求めることがある)は日本の「レベル5」(常にシステムが運転を実行)に近い。本稿では中国の分類に基づいて記述する。

百度の自動運転車「ロボタクシー」は河北省滄州市、長沙市、広州市、北京市の亦荘地区などですでに運行している。利用者がスマホでロボタクシーを呼べば、スマホに入力した目的地に自動運転で連れて行ってくれるらしい。但し、ロボタクシーが走ることができる地域はまだ限定されている。

事故を超える進歩の勢い

自動運転の実験都市としては江蘇省無錫市が最も先行している。2019年に国のコネクテッドカー実験地区に指定され、市内にLTEによるV2Xのネットワークを広げてきた。2022年には市内全域にネットワークを広げる予定で、そうなると市内全域を自動運転車が走り回ることになるだろう。

急速なEVや自動運転の展開には問題がないわけではない。中国では10月1日の国慶節から一週間は休暇で、今年も多くの人々が車に乗って出かけた。ところが、EVの数が多かったため、高速道路のパーキングエリアにある充電ステーションでは4時間待ちの行列ができたという。

また、自動運転車による事故も相次いでいる。今年7月と8月には、新興EVメーカーのNIO(蔚来汽車)の車に乗っていた人が事故にあって亡くなった。NIOの自動運転はロボタクシーのような無人運転ではなく、運転手が常時ハンドルを握っていなければならない「レベル2」の自動運転で、「ナビゲート・オン・パイロット」と呼ばれるシステムである。高速道路などへ自動で入っていって、高速道路上では適切な車線を自動で選んで走っていく。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来

ワールド

ユーロ圏サービスPMI、6月改定値は50.5 需要
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story