コラム

北方領土にロシア空軍の戦闘機が展開 演習か、常駐か?

2018年08月09日(木)18時00分

第一は、今年9月に予定されているロシア軍の極東大演習「ヴォストーク2018」を見据えたものという可能性である。前回の「ヴォストーク2014」でも択捉島には大規模なヘリ部隊が展開したが、今回は戦闘機部隊も北方領土を拠点として訓練に参加するものと考えられよう。

しかし、第二に、「サハリンインフォ」の記事からは、戦闘機部隊の展開がより長期化しそうな雰囲気が感じ取られる。

たとえばヤースヌイ空港運営当局のミトロファノフ空港長代行の次のような言葉を引用してみよう。

「私たちの空港が空の守り手を受け入れられるよう、大変多くの人々の努力が注ぎ込まれました。配備の開始は、ロシアの兵器の力を実感できる新たな契機です。皆さんの勤務が順調で陰りなく、暮しが常にうまくいきますように」

雨はよき兆し

また、択捉島を管轄するクリル地区のロコトフ地区長は、戦闘機の到着に際して雨が降ったことについて次のように述べた。

「雨はどんな始まりにとってもよき兆しであるとされています。(中略)択捉島では様々な兵科を代表する人々が勤務しており、ここに戦闘機パイロットの皆さんが加わりました。皆さんがこの大きな家族に加わったことをお祝い申し上げます」

そのうえで、「ここで暮らし、祖国を守る人々の生活が快適でおもしろいものになるように」地域を挙げて協力するとも付け加えたとされている。

以上のように、現地当局者たちの発言は明らかに戦闘機部隊が長期にわたってこの島に常駐することを念頭に置いているように聞こえる。戦闘機の到着に当たって地区長が出迎えを行っていること、空軍側からは極東を担当する第11航空・防空軍副司令官というそれなりの人物がわざわざ択捉島まで出向いていることも注目されよう。

きわめつけは、「サハリンインフォ」による次のような論評であろう。

「試験戦闘配備は、国境防衛のための本格的な(恒常的な)配備の第一段階である。今後の2ヶ月間(10月まで)、パイロット、技術要員、空港の地上職員は、共同作業が自律的に進むようにしなければならない」

プロフィール

小泉悠

軍事アナリスト
早稲田大学大学院修了後、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究などを経て、現在は未来工学研究所研究員。『軍事研究』誌でもロシアの軍事情勢についての記事を毎号執筆

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story