コラム

政権直撃のパー券裏金問題と検察「復権」への思惑

2023年12月09日(土)18時52分

「ナベツネ」が喝破した政党の本質

「派閥の功罪」を政治記者として知り尽くした渡辺恒雄氏(読売新聞グループ本社代表取締役主筆)は、若かりし頃に著した『派閥―保守党の解剖』(弘文堂)で、「政党はその生命力を、自己の内部に探り出さなければならない」と喝破している。政権の屋台骨が揺らいでいる中で必要なことは、当座を凌ぐことではなく、具体的な腐敗防止策を自律的に構想することだ。

パー券代金の現金処理を禁止し銀行振込・クレジットカード・電子マネーの利用に限定する。収支報告書上の匿名処理の基準となる「20万超」を「5万円以上」または「1万円超」に引き下げる。収支報告書の訂正可能期間を「1年」に制限するとともに、報告書の提出・訂正をExcel利用に限定、全ての項目について横串全文検索を可能とするデジタルデータとして公開する。不記載・虚偽記載罪を厳罰化する。会計帳簿や明細書をしかるべき猶予期間経過後に公開する......といった政治資金規正法の改正案はその例だ。

あるいは、政治家の「個人収支」公開範囲を拡大する(資産=ストックにつき普通預金口座も公開対象にし、収支=フローにつき株配当所得や売却益の公開を義務化するなど)。調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途を公表させ、残金は返還させる。日大に対する私学助成不交付のように、組織的な不祥事を起こした政党に対しては政党交付金(合計年315億円)を懲罰的に減額・不交付にする。「あっせん」に関わる資格登録と実績公開制度を創出する......といったことも一案である。米大統領が納税申告書を公開するという(トランプ前大統領が破ろうとした)連邦議会の慣行やLDA(ロビイング開示法)やFARA(外国代理人登録法)などの法令も一定程度は参考になろう。日本での個人献金文化を醸成するべく、匿名性(プライバシー)と追跡可能性(トレーサビリティー)双方を担保した新しい政治献金制度の構築も将来的な課題だ。

そうした腐敗防止の具体策を政党がいかに自律的に打ち出せるかが問われている。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米政府、輸送中のイラン産原油売却を容認 30日間の

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏

ワールド

イラク、外国企業運営の油田で不可抗力宣言 ホルムズ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    将来のアルツハイマー病を予言する「4種の先行疾患」…
  • 9
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 8
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story