コラム

ベネズエラの次はグリーンランド? トランプが掲げる「ドンロー主義」、帝国主義的野心の向かう先

2026年01月06日(火)15時00分

世界最大の石油埋蔵量を誇るベネズエラ

ベネズエラ(3030億バレル)はサウジアラビア(2670億バレル)を上回る世界最大の石油埋蔵量(推定)を誇る。トランプ氏がイスラム過激派「イスラム国(IS)」の拠点を叩いたナイジェリアも380億バレルの石油を埋蔵している。


第2次トランプ政権の国家安全保障戦略は西半球のベネズエラやグリーンランドを1つの勢力圏とみなす。難民・麻薬流入阻止を大義名分にしたベネズエラ軍事介入に続きグリーンランドを標的にしたことで庭先の西半球で中露の介入を許さない「資源帝国主義」の姿を露わにした。

急激に進む地球温暖化はグリーンランドを「氷に閉ざされた未開の地」から「世界のエネルギー安全保障と地政学の最前線」へと変貌させた。氷床の融解が資源開発の門戸を開き、国家間の軍事的な緊張を高める要因にもなっている。

グリーンランドへの行動は「20日以内に再検討」

夏季の海氷減少で、掘り出した資源を運ぶ船舶の航行期間が延び、輸送コストが低下した。ロシア沿岸の北東航路やカナダ側の北西航路が開放されつつあり、グリーンランドは北極海航路の戦略的ハブとしての価値を増している。

トランプ氏はグリーンランドに対し行動を起こすつもりかと問われ「20日以内に再検討する。グリーンランド周辺は中露の船で溢れかえっている。国家安全保障上の理由からわれわれにはグリーンランドが必要だ。デンマークに防衛や管理を遂行する能力はないだろう」と言い放った。

米国は21世紀のための新しいドクトリン「ドンロー主義」を確立するというトランプ氏はこう宣言した。「西半球に他者が勝手に入り込み石油を盗んだり、麻薬をばらまいたり、米国民を脅かしたりするのを許さない。これこそ『米国第一』であり『西半球第一』だ」

ウラジーミル・プーチン露大統領がロシアの下腹部ウクライナに侵攻したのと同じく、トランプ氏も西半球の安全保障構築と資源獲得の野心を剥き出しにする。中国の習近平国家主席も台湾統一の機会を虎視眈々とうかがう。世界は力と地政学のドグマに支配されつつある。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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