コラム

イギリス統一地方選で二大政党が大敗...「英政界の中心」ファラージ氏がここまで「成り上がれた」ワケ

2025年05月02日(金)17時00分

英国流マスタード色ズボンとツイードのジャケット。昼間からパブでパイント(568ミリリットル)グラスのエール(地ビール)を飲み、煙草をくゆらす。赤ら顔でガハハと豪快に笑ってEU離脱を草の根に説いて回る。ファラージ氏のEU離脱貫徹と移民規制を支持する声は根強い。

勤勉なスターマー首相、超エリートのリシ・スナク前首相(保守党)より「政界の道化師」と呼ばれるボリス・ジョンソン元首相(同)に近い。ファラージ氏は裕福な家庭に生まれ、大学に行く代わりに商品相場のトレーダーになった。

「湿った雑巾のようなカリスマ性」とEU大統領をこき下ろす

14歳で保守党に入党するも1992年、ジョン・メージャー首相がEU創設を定めたマーストリヒト条約に署名したことに嫌気が差し、UKIPに加わった。交通事故や病気で生死をさまよい、2010年総選挙では横断幕が小型機の尾翼に絡まって墜落、肺に穴が空く瀕死の重傷を負った。

2番目の妻と別居中で、フランス人の女性政治家と交際を続けている。ベルギーのヘルマン・ファンロンパイ元首相がEU大統領(首脳会議の常任議長)に就任すると「湿った雑巾のようなカリスマ性を持ち、低級な銀行員のような外見」とこき下ろした。

ファラージ氏はほぼすべての選挙区で候補者を立て、どの政党よりも多くの候補者を擁立。次期総選挙を念頭に自由民主党の統一地方選戦略を模倣し、動員力を強化しようとしている。スポンサーは富裕層への優遇税制を期待するテクノロジー投資家や実業家、保守党の大口寄付者だ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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