コラム

原点は「ナチスの純血思想」...オーストリアで自由党が第1党に 今や「極右」は欧州政治の主流に

2024年10月01日(火)19時19分

ナチスの過去を美化する自由党のキクル党首

アレクサンダー・ファン・デア・ベレン大統領を「老いぼれのミイラ」と罵倒。ナチスがオーストリアを併合した後、アドルフ・ヒトラーが「ドイツ帝国への復帰」を宣言した歴史的なウィーンのバルコニーを選挙運動ビデオで紹介し、ナチスの過去を美化していると批判された。

キクル氏は自らをヒトラーが名乗っていた「フォルクスカンツラー(人民宰相)」と呼ぶ。「要塞オーストリア」計画は、同化に失敗したとみなされる中東・アフリカの非欧州系移民を大量追放・強制送還する「再移住」の派生形と言える。

「再移住」の原点はナチスの純血思想。自由党の主張は多文化主義が国家のアイデンティティー、文化、社会的一体性を脅かすという極右思想と連動する。自由党が得票率25.4%で初めて全国トップになった6月の欧州議会選では多くのEU加盟国で極右政党が躍進した。

極右は間違いなく欧州政治の主流の一つになった。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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