コラム

ロシア軍から首都を「死守」せよ! 抵抗組織リーダーが語る「キエフ攻防戦」の現実

2022年03月16日(水)11時55分
ウクライナ領土防衛軍

ウクライナ領土防衛軍 Mykola Tymchenko-REUTERS

<長くウクライナの民主化運動の先頭に立ってきた元高校教師アンドリー・レヴス氏が語る、首都キエフをめぐる戦闘の現状と今後の見通し>

[ロンドン発]ウクライナの首都キエフを攻めあぐむロシア軍は援軍や民間軍事会社ワグナーグループ、シリアの傭兵で兵力の補強を試みているが、今後1週間以内に大規模な攻撃を再開できる見通しは立っていない。2013~14年のマイダン革命で民主派の先頭に立ち、現在、ウクライナ軍とともに数十万人の市民抵抗運動を率いる元高校教師がどのようにキエフを死守しているのかについて語った。

自由ウクライナ抵抗運動創始者アンドリー・レヴスさん(42)は02年、母校の高校で歴史を教え始めた。04年のウクライナ大統領選では、ダイオキシン中毒により痘痕だらけの顔になった親米欧派ビクトル・ユーシェンコ氏陣営で本部長を務めた。開票の結果、親露派ビクトル・ヤヌコビッチ氏が当選するも、大規模な抗議活動「オレンジ革命」が起き、やり直し決選投票でユーシェンコ氏が大統領に選ばれる。

220316kmr_utd02.png

アンドリー・レヴスさん(左、筆者がスクリーンショット)

その後、地元新聞社で働き、07年から再び政治の世界に。マイダン革命でヤヌコビッチ政権との事実上の市街戦を経験したあとウクライナ最高議会議員となり、治安機関でも働いた。レヴスさんは英シンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)のオンラインイベント「ウクライナ紛争 キエフの攻防」で現地の状況を報告した。「戦争中にあなたたちと話す機会があるとは思いもしなかった。全ての状況が非現実的に思える」と切り出した。

──いまキエフはどんな状況か

「14日に私がいたキエフのある地区は敵意に満ちていた。そして今日、私はこうしてロンドンや世界中の人々と話している。この数日、私たちは多くのことを乗り越え、生き延びてきた。ロシアはウクライナに対する態度を隠したことがない。マイダン革命に続くクリミア併合と東部紛争にそれは最もよく現れた。ウクライナが1991年末に独立し、民主的な政府が誕生してからロシアの態度は謎に包まれていた」

「しかし、プーチン氏は2000年に大統領になってから、ウクライナは破綻国家であり、人類の地政学上の過ちだと公言するようになった。彼の目的はウクライナ国家という国際関係における主体を破壊することだ。私たちは今、ロシアの軍事行動に直面している。これは通常の戦争ではない。80%の戦闘は情報空間で行われ、実際に戦闘が行われているのは残り20%に過ぎない」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インフレリスクは上振れ、小幅下振れ容認可能=シュナ

ビジネス

エネルギー貯蔵、「ブームサイクル」突入も AI需要

ワールド

英保健相、スターマー首相降ろし否定 英国債・ポンド

ビジネス

ロシア、初の人民元建て国内債を12月発行 企業保有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 6
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 7
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 8
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 9
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story