コラム

世界に誇れる「日本の医療制度」の行方...政府が進める「医療費の削減」は、なぜ難しい?

2025年11月26日(水)19時50分

OTC類似薬の保険適用見直しだけで4兆円削減はほぼ不可能

さらに言うと、OTC類似薬の保険適用見直しだけで4兆円の金額を捻出することはほぼ不可能である。

日本の医療費に無駄があるのは事実だが、療養病床が事実上、介護サービスの肩代わりをしていたり、本来、地域社会や企業でケアすべき精神疾患の患者を入院という形で受け入れるなど、他の社会保障制度の不備を医療が引き受けている面が否定できない(日本の精神病床数は欧米各国の3~20倍もある)。


当該分野の予算を削ってしまうと、結局、他の分野で負担が増えてしまうだけでなく、むしろ経済全体での負担は重くなる可能性すらある。

確かに医療費の4割は75歳以上の高齢者に支払われているが、高齢になるほど疾患を抱える確率が上がり、重症度も高くなってくるので、支払い対象が高齢者に偏るのは医療保険の性質から当然の結果ともいえるし、若い人でも重篤な疾患にかかる人はたくさんいる。多少の無駄は存在するにせよ、医療費のほとんどは命に直結する治療に充てられている現実について理解する必要があるだろう。

近年、国民負担を引き下げ、手取りを増やすべきだとの声が大きくなり、医療も縮小したほうが良いという意見も聞かれるようになってきた。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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