コラム

超円安の時代:目安が1ドル150円となる理由、住宅は持ち家がいい理由

2022年10月07日(金)10時35分

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円安の要因は複合的なもの

購買力平価とは両国の物価の違いを基準にした理論的な為替レートのことで、このレートが円安になった場合、日本の物価が上昇していることを意味する。だが、現実に日本とアメリカの物価を比較すると、日本はアメリカほどには物価が上がっておらず、購買力平価の為替レートは、むしろ円高に振れている。

購買力平価を基準にすれば、市場のレートが安すぎるという状態であり、近い将来、円高に戻すというのも、一つのロジックとしては成立する。

だが、購買力平価による為替レートは、あくまで現状の物価水準を基に算出されたものであり、将来を担保するものではない。

もし市場の動きが先行して円安になり、それによって日本の輸入価格が上昇すれば、やがて日本の物価も上昇してくる。先に現実の市場レートが動き、購買力平価の理論値が後から付いてくるシナリオも十分に考えられるのだ。

このほかにも、輸入物価の上昇による貿易赤字の拡大、海外生産シフトによるドルの円転需要の減少、あるいは、日本の国際的な地位低下に伴う安全資産としての円ニーズの低迷など、今回の円安には多くの要因が絡んでいる。というよりも、積極的な円高を予想できる材料があまりにも少ないといったほうがより現実的かもしれない。

為替レートの決まり方は複雑なので安易な単純化は禁物だが、現状のファンダメンタルズから考えると円安が進みやすい環境であるのは間違いないだろう。

かつての日本社会では、円安は基本的に「歓迎すべきもの」という見方が大勢を占めており、円安誘導を求める声も多かった。だが、今回はだいぶ様子が違っている。

ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正社長は「円安のメリットは全くない」と発言。日本商工会議所の三村明夫会頭も、中小企業の多くが円安による悪影響を受けているとして、「日本経済にとって良くない」との見解を示している。

鈴木俊一財務相に至っては、「円安が進んで輸入品等が高騰している。悪い円安と言える」とかなり踏み込んだ発言を行った。

戦後の日本経済は基本的に輸出主導型で成長しており、日本経済の主役は海外に製品を輸出する製造業であった。為替が安くなれば、円ベースでの輸出企業の業績は拡大するので、円安はメリットというのが一般的な解釈だった。

ところが1990年代以降、日本の製造業は国際競争力を低下させ、以前ほど輸出が好調ではなくなった。加えて一部の製品については、韓国や台湾、中国など新興国と価格勝負しなければならず、コスト対策から生産を海外にシフトしている。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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