コラム

日産を見捨て、GMを選んだホンダが「正しい」理由

2020年10月07日(水)12時22分

どちらが正しかったのかについて今さら説明する必要はないだろう。もしホンダが同省の意向に従っていたら、今の日本の自動車産業は存在していなかったはずだ。

近年、ホンダは明確な戦略を打ち出すことができず、かつてのホンダらしさをすっかり失ってしまったとの評価がもっぱらだった。だが非主流派出身の八郷隆弘氏がトップに就任したことで状況は大きく変わりつつある。

世界最大手の車載電池メーカー「寧徳時代新能源科技(CATL)」とリチウムイオン電池の開発・生産について戦略的パートナーシップ契約を締結。EV化と中国市場攻略に向けた準備を着々と進める一方、欧州市場からの事実上の撤退を決断するなど、矢継ぎ早に次世代戦略を打ち出している。自前主義にこだわってきたホンダにとって、GMとの本格提携は大きな方向転換だが、自動車産業が向かう先を考えれば、これは正しい決断といってよい。

今回、ホンダは政府の要請をはねのけ、技術の趨勢に沿った決断を行ったわけだが、本田宗一郎がつくり上げたかつてのホンダイズムがようやく戻ってきたともいえる。

<本誌2020年10月6日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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