コラム

「人間のライターはもう不要」? チャットGPTにロシアの記事を書かせてみた

2023年05月30日(火)14時35分
地球

ARTISTEER/ISTCOK

<実際に国際情勢記事を書かせたらどうなるのか? やってみて分かった「生成AIにできること」と「できないこと」について>

評判のチャットGPTを使ってみて感じた。「おぬし、できるな」。首筋がヒヤリとする。そのうち、人間のライターには原稿の依頼が来なくなるかも。今すぐではないが、あと1年もすればチャットGPTやその他のAI(人工知能)で、それらしい記事が書けるようになるだろう。

なぜ筆者がそう思うか。実際に使ってみた結果を紹介しよう。

筆者がチャットGPTのことを初めて聞いたのは、翻訳性能についてだった。和文英訳で、他のアプリより優れている、というのだ。使ってみて、結果はそのとおり。

脱落、重複がないし、原文を誤解することが少ない。英語も心なしか滑らかだ。もちろん誤訳は時々するのだが、筆者が修正に使う時間は最短だった。

これは面白い、からかってやろうと思って実験に取りかかる。まず、国際情勢評論においてチャットGPTは根本的なハンディを持っていることを発見した。

ウクライナ戦争の和平協議の見通しを聞くと、「私の知識は2021年までのものであり、ウクライナ戦争に関する最新の情報は持っていません。

ウクライナの現在の政治的・軍事的な状況については、ニュースや信頼性のある情報源を参照することをお勧めします」との答えが返ってきた。

これでは国際情勢評論には(まだ)使えない。しかし時間の問題で、そのうち最新の情報を読み込めるようになるだろう。では21年時点のことならどう答えるか。

「21年時点のロシア・ウクライナ関係で、その後戦争が起きることを示唆するものはあったか?」と日本語で聞くと、「クリミアや東ウクライナの一部をロシアが占領していることは紛争要因だが、戦争が起きるかどうかは予測できない」という答えが返ってきた。同じ質問を英語でしても回答は大同小異だった。

データ収集には適している

日本語でも英語でも見落とされていたのが、21年7月にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「歴史から見てウクライナ人とロシア人は同一。ウクライナの主権はロシアを通じてのみ行使できる」という趣旨の、開戦への雄たけびとも取れる論文を発表したことだ。

これは当時は、筆者も「何だこれは?」と思ったが忘れていた。つまりチャットGPTは、何かをめぐってその当時に世界で議論が起こったものでなければキャッチしないのだ。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、31万人に学生ローン免除 美術学校

ワールド

米名門UCLAでパレスチナ支持派と親イスラエル派衝

ビジネス

英シェル、中国の電力市場から撤退 高収益事業に注力

ワールド

中国大型連休、根強い節約志向 初日は移動急増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story