コラム

築150年の家に住むと何が起こるのか...ビクトリア朝時代の住宅の窓をめぐる苦労

2025年06月26日(木)17時03分

それらは「サッシ窓」なので上下に開け閉めするタイプで、本来なら押し上げた位置で止まるはずだ。でも、これを上げるのにとんでもなく力がいるのだ。

窓を開ける前には重量挙げ選手のごとく正しい姿勢を取って構えなければならず、そうしなければぎっくり腰になってしまう。


そしてほどよい位置まで窓を持ち上げ、手を放しても大丈夫だと思った瞬間、窓はレンガの山か鈍いギロチンのごとく崩れ落ちて来る。小さな子供の指が粉々に砕かれる恐ろしいイメージが思い浮かんでしまう。僕は危険な窓を所有しているのだ。

だから開け方を分かっているのは僕だけで、窓枠に置かれている見苦しい木片は、窓を開けて固定するためのつっかえ棒だ。それぞれの窓は微妙に性質が異なり、僕だけがその癖を知っている。

1つは上から押し下げるタイプで、また他の1つは下から持ち上げなければいけない。ちゃんと途中で止まったと思ったのにその後1時間かそこらで不意に落ちてくる窓もある。また他の1つは、開けるのは簡単だが閉めるのがあまりに大変なので、本当にその部屋の空気を入れ替える必要があるときしか開けないようにしている。

ガラス職人も途方に暮れた

きっと、なぜ修理しないのかと思われることだろう。もちろん僕は試みた。でも今となっては同じ部品が製造されていない。スライドして開閉したり位置を固定したりするためには側面の溝に特殊なコイルが必要だ。でも全力で探したのに(アメリカのサイトまで検索したが)、在庫1つすら残っていなかった。ともかく、15年前にはまだコイルが見つけられてそれを使ったこともあったから、しょせん長持ちしないのは分かってる。全て3年もしないうちに壊れてしまった。

二重ガラスも交換できない。これまで何人ものガラス職人が、この窓の前で途方に暮れた。通常の窓ガラスだったら、壊れたガラスを取り外して新しいガラスをそれに合うサイズにカットするだけで済むのだが。

だから僕は、この不条理な状況に何年も耐えてきた。とはいえどこかの時点で、裏側のこれらの窓は全て、何千ポンドもの費用をかけて総取り換えする必要があるだろう。一方で、それよりはるかに古い正面の窓は、安い費用で2つの耐候性塗料を新しく塗り替えただけで、素晴らしく見栄えが良くなった。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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