コラム

コロナ予防でひどい風邪が流行し、クリスマスは9月に始まった

2021年10月21日(木)16時30分
ロンドンの環状高速道路M25を封鎖して気候変動に抗議する活動家

活動家がロンドンの環状高速道路M25を封鎖して気候変動に抗議する一方で、ガソリン不足にいら立つ人々による小競り合いも起きている(写真は10月13日、M25上で拘束される活動家) Henry Nicholls-REUTERS

<ここのところ、イギリスではかつてないようなおかしなことがいろいろ起こっている。長い自粛生活で免疫低下した人々を強力な風邪が襲い、環境保護を叫びながらガソリン不足に憤り、ブレア一族は荒稼ぎし......>

あらゆる種類のおかしなことが起こっている。そのほとんどは、僕が予想もできなかったものだ

最近のある朝目覚めると、右耳に痛みがあった。聞こえも少し悪いし、バランス感覚までおかしくなっている。僕はちょっとした風邪を引いていたが、これはいつになく珍しい症状だった。僕はむしろ、コロナ禍のここ数年はものすごく感染予防に気をつけているし、他の人々も行動に気を配っているから、風邪など引くはずがないと思っていた。それに、何カ月も続いた有意義な「休養」のおかげで、どんな病気もはねのけられる体になったと思っていた。

ところがそんな折、多くの人々が「かつてないレベルの風邪」に苦しんでいるとの記事を読んだ。イギリスでは風邪はたいてい9月に流行するが、ソーシャルディスタンスを取って他人との接触を避けようと長々と続けてきた異例の試みのせいで、今年はイギリス人は「免疫負債」に苦しめられている。日常的に細菌にさらされていなかったため、免疫システムが弱まってしまっているのだ。ある記事によれば、1年間運動しなかった人にいきなり10キロのマラソンをしろというようなものだという。

完全に予想通りだったのは、僕が医師の診察を受けられないだろうなということ。僕の家のそばにはクリニックがあるから、受付で予約が取れないか歩いて行ってみることにした。でもクリニックは、入り口を閉めてしまって予約済み患者以外は締め出していた。僕の症状ではどの点耳薬が必要なのかは分かっていたが、薬剤師は医師の処方箋なしにその薬は売ってくれないし、処方箋は医師の診察がなければ手に入れられず、そして何度電話をしてもつながらない診察の予約は、今や強い意志と運の良さがなければトライできないプロジェクトになってしまった。

化石燃料に対する「国民的感情」はどっち?

イギリス中で、人々は気候変動に対して行動するよう呼びかけている。活動家たちはロンドンの環状高速道路M25を封鎖し、ヒースロー空港へのアクセスを妨害するなどして抗議行動を行っている。とても危険で迷惑な行為だが、彼らは本当に必要な呼びかけなのだと言う。

だがそれと同時に、人々はガソリンスタンドでガソリンの供給不足に怒り、奪い合いをしてもいる。もし僕が政治家だったら、化石燃料に対する「国民的感情」はいったいどっちなのかと分からなくなることだろう。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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