コラム

イギリスのエネルギー価格、果てしない上昇の元凶は......

2019年03月01日(金)16時40分

政府が国民に乗り換えを促す、という奇妙な状態が何年も続いている。たとえば、料金明細を受け取るとき、会社側は明細書の目立つところに、弊社の他のプランに乗り換えればいくらくらい節約できますよ、と明記し、他社に乗り換えてよりお得な契約ができますよ、とも知らせなければならないことになっている(そこまでしても多くの人は乗り換えない)。そして残念なことに、政府は消費者の混乱を招く恐れがあるとして、エネルギー会社に「基本料金ゼロ」のプランを禁じるようになった。その結果、たとえば小さなアパートに一人暮らしする人など、エネルギー使用量がとても少ない人々が、かなりの料金上昇に直面した。

料金を安くするという狙いにおいては、プライスキャップは明らかに裏目に出ている。競争を阻害しているとさえいえるかもしれない。乗り換えをしない何百万もの人々は、どこか別のところならより安く済むことに「なんとなく気付いて」いる(でも年間で何百ポンドもの節約になることには気付いていない)。そしていま彼らは、政府がエネルギー企業による価格押し上げをどうにかして抑えようとしていることは「なんとなく気付いている」(でも、どうすれば実現できるのかには気付いていない)。

確かに、プライスキャップだけがエネルギー価格上昇の原因と言うわけではない(卸売り原価の上昇やポンド安で輸入価格が高騰、といった要素のほうがより大きな原因だ)。僕の場合、1年前に市場最安値だった会社から、今日、現時点での最安値の会社に乗り換えなければならなかった。結局、料金は約25%も上がり、もはや市場原理では説明できないけれど。あなたのおかげだ、英政府!

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:米国株の調整局面、投資家は「一時的な足踏み」

ビジネス

英企業、来年の賃上げ3%予定 AIによる雇用減懸念

ワールド

防衛費増額は納税者にメリット、装備品からの派生技術

ビジネス

バフェット氏のAI生成偽動画、米バークシャーが警告
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story