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ノーベル経済学賞セイラーと、「合理的経済人」じゃない僕たち
このシステムはセイラーの「ナッジ理論」にもとづいている。人々がよい選択をするためには、働きかけてもらう、つまりナッジ(注意をひくために軽くつつく)してもらう必要があるということからこの名がついた。
年金制度の成功で、政府はこのシステムを多数の従業員を抱える大企業だけでなく全ての企業に適用することにした(フルタイムで働いてもらっているなら、家で雇っているナニーの年金まで手配しなければならないらしい)。
全ての企業に適用するに当たり、ごく小さな企業には専門の経理部門がないから(ナニーを雇っている一家庭ならなおさらだ)、政府が支援する必要があった。そういうわけで、今では政府によって開設された簡単に加入できる年金制度がある。
さて、ここで僕の話だ。この年金制度には自営業者やフリーランスも加入できるのだが、加入している人はとても少ない。僕が加入したのは、この制度が簡単で(手続きはネット上で約20分)、手数料も安いからだ。
以前なら、自営業者の場合は「雇用主が掛け金で貢献してくれる」わけではないから、年金は加入する価値がほとんどないといわれていた。自営業者でも特別に収入の多い人たちに限っていえば、税金の控除額がかなり大きくなるから、年金に加入する意味があると思われていた(僕はこれに該当しない)。
僕がこの制度をよく調べてみたところ、収入の低い自営業者にとっても年金加入の利益が実はあるのだということが判明した。説明するのは難しい。すごく長くて退屈な話になってしまうだろう。だが、とにかく本当に経済的なインセンティブがあって、そして僕はそれを知らなかったのだ。つまり、「ナッジ」されるまでは。
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