コラム

米EUに迫る「離婚」の足音...脅しを掛け合う両者の「バズーカ砲」とは?

2026年03月19日(木)13時20分

欧州人民党の貿易担当トップであるヨルゲン・ヴァルボーン議員は、ターンベリーでの合意(+最高裁の判決内容)が、米EU貿易協定として全要素が遵守されていることが確認されるまでは発効しないという案を出した。これなら支持を集められるかもしれないと述べた。

しかしそれには、ワシントンがEUのデジタル規制への脅威を止め、アメリカがEU産鉄鋼製品の関税を引き下げるまで、欧州委員会が両者の協定を実施しないことを認める条項が必要だと説明した。しかし、彼は、ここまで厳しい要求を突きつける用意があるかどうかについては「まだその段階に至っていない」と述べた。

3月11日、トランプ大統領は通商法301条を使った新たな関税をかける調査を開始すると発表した。この301条は「核オプション」とか「バズーカ砲」と言われてきた。

実はEU側にも「バズーカ砲」がある。正式名称は「反威圧措置(Anti-Coercion Instrument: ACI)」で、特に左派の間でトランプ政権に使うべきだという意見が、ずっとくすぶり続けている。もともとは中国(やロシア)を念頭において2023年につくられた。

グリーンランド発言問題の際は、対米にこのバズーカ砲の使用が叫ばれた。エマニュエル・マクロン仏大統領は、各国首脳に使用の賛同を働きかけたという。発言撤回で一応は収まったものの、今でも背後の脅しのようになっている。

トランプ大統領は301条について「日本やEUを含む16の主要な貿易相手に対して調査を開始する」と発表したが、筆者には主にEUとやり合っているように見えてしまう。「バズーカ脅し抗争」である。

なんといっても米EUは、両者で世界のGDP43%を占めるのだ。もちろん日本をはじめ各国には各国の戦略があるが、両者のやり取りや取り決めが、世界の貿易のスタンダードや方向性を決めていくと認識している。

将来的にアメリカとヨーロッパが「離婚」する方向性は間違いないと思うが、どう動いていくのかは分からず、先が見えない。「冷戦後」の時代が終わって到来する新しい時代は良いものだろうか、暗いものだろうか。

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プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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