コラム

ウクライナ「2027年1月EU加盟説」は誰が、どんな意図で言い出したのか?

2025年12月22日(月)16時45分

情報が大変乏しいなか、手がかりになる報道もあった。

一つは、アメリカの使節団が経済を念頭におき、両国に譲歩を提案する意図だった可能性である。

ロシアにはG8復帰という飴。国際社会から疎外されていたが、再び恩寵を受ける機会を与える。そしてウクライナには、EU早期加盟である。

もしモスクワが世界経済に復帰し、軍事よりも経済プロジェクトに注力できれば、平和が確保されると考えているというのだ。仏紙『ル・モンド』が報じた。ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナがEUに加盟することに反対していないと言われる。

これには説得力もある。彼らは戦火が止まないドネツクに、停戦後に「経済特区をつくる」といった発想をする人たちだ。

それに、EUに関して知識と理解のある者には、この提案は考えつかないだろう。ジャック・ドロール研究所のEU拡大政策専門家、ルーカス・マチェクはAFPに対し「この日付を提唱した人々は(ウクライナの加盟問題に対する)疑問の1000分の1も考えていないだろう」と答えたが、この「条件」にも合致する。

ウクライナの「狡猾な」試み?

もう一つは、ウクライナ側が関与している可能性だ。EU加盟を早く実現させるための、キーウの「狡猾な」試みだという見方があるという。「最近のキーウの巧妙な交渉手段は否定できない」と、外交筋は英紙『テレグラフ』に語っている。

実際、ゼレンスキー大統領はキーウで記者団に対し、自分と交渉チームは「ウクライナが将来、EU加盟国となることを考慮し、和平計画のいくつかの点についてアプローチを策定した」と語った。

「EU加盟時期を明記した合意に我々が署名すれば、この合意の当事者であるアメリカは、自らが影響力を持つ欧州諸国によって我々の欧州への道が阻害されないよう、あらゆる手段を講じるだろう」

EUの新規加盟は全加盟国が賛成しないと実現しないが、ハンガリー等にアメリカが圧力をかけてくれることを期待しているという意味に聞こえる。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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