コラム

シリアは熟練兵をロシアに提供か? サウジなど親米国もアメリカと距離を置く姿勢

2022年03月15日(火)17時40分

アメリカとの関係は不利益の方が多い?

バイデン政権は1月にはエジプトに対し、「人権上の懸念」を理由に1億3000万ドルの軍事支援の凍結を発表した。サウジアラビアはアメリカからの原油増産要請を拒否している。エジプトもサウジも中東における伝統的なアメリカの同盟国だが、その関係はオバマ政権時代のように冷え込みつつある。

アフガニスタンにおけるタリバン復権は、アメリカは頼りにならないという印象を中東諸国に与えた。ロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカの同盟国であることは利益より不利益を多く生むのではないかという懐疑も芽生えつつある。

中東では親米国家もロシアや中国と強い結び付きを持つが故に、両国からの圧力を免れない。ロシアは制裁回避のため中東との経済関係を強化する可能性もある。

今ある同盟関係の弱体化や崩壊は、既に揺らぎつつあるアメリカを中心とする世界秩序の崩壊を加速させる。それは中東で既に始まっているかもしれない。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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