コラム

ウクライナ侵攻から1年、世界の半分以上はウクライナを支持していない

2023年03月06日(月)13時04分

領域を横断するデジタル影響工作の全貌をとらえるには

デジタル影響工作は社会の歪みを利用した攻撃であり、社会のさまざまな側面をモニターしなければならない。その範囲は今回見てきたように広く、デジタル影響工作は国際政治学、サイバーセキュリティ、メディア論、計算社会学あるいはロシアや中国などさまざまな専門領域が交差するテーマで複数の専門家のチームでなければ追いかけるのは難しい。

しかし、異なる専門家が参加するデジタル影響工作のプロジェクトは多いとは言えない(少なくとも日本では)。あったとしても2つか、3つの分野にまたがるくらいである。日本だけではなく、海外においても同様である。その体制が出来ていないことが、1年を振り返ってあらためて明らかになった。専門機関がロシアのデジタル影響工作の成否について言及しないのは、いまだに見えていないことが多すぎることも大きな理由なのだ。その「見えざる手」を可視化する試みが書籍として3月中旬に刊行される。『ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する』(原書房)である。参加したのは、各界で活躍する7人の専門家だ。

ichida20230306cc.jpg
 齋藤孝道 明治大学理工学部教授、明治大学サイバーセキュリティ研究所所長
 藤村厚夫 スマートニュース株式会社メディア研究所フェロー
 藤代裕之 ジャーナリスト、法政大学社会学部教授
 笹原和俊 東京工業大学環境・社会理工学院准教授
 佐々木孝博 元在ロシア日本大使館防衛駐在官
 川口貴久 東京海上ディーアール株式会社主席研究員
 岩井博樹 株式会社サイント、情報セキュリティ大学院大学客員研究員

国際政治学、メディア論、計算社会学などさまざまな分野からの知見を集めたものとなっている。私も末席を汚しているが、正直恐れ多い。

残念ながら今回とりあげたウクライナ侵攻1年のまとめについては日程の関係で本書に収録されていないが、それ以上に視野を広げるものが満載である。

なお、ウクライナ侵攻1年の個別のレポートの内容を反映したまとめは機会があればあらためて行いたい。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 8
    将来のアルツハイマー病を予言する「4種の先行疾患」…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 10
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story