アングル:5年目迎えたウクライナ戦争、戦車が消えドローンが主戦力に
写真は戦車の前に立つバレンティン・ボダノフ曹長。2月19日、ハルキウの前線付近で撮影。REUTERS/Sofia Gatilova
Volodymyr Pavlov Dan Peleschuk
[ハルキウ州(ウクライナ)24日 ロイター] - ウクライナ第127独立重機械化旅団の戦車小隊長を務めるバレンティン・ボダノフ曹長(36)が戦争開始間もないことの光景として思い出すのは、リング上でボクサーがパンチの応酬をするような装甲車両同士の戦いだ。しかし戦争が5年目に突入した今、そのような展開はほぼ実現が不可能になっているという。
小型だが殺傷能力があるFPVドローン(搭載カメラの映像をリアルタイムで確認しながら操縦する無人機)がウクライナの戦場で制空権を握り、装甲車両にとって少しでも動くことはリスクが極めて大きいからだ、とボダノフ氏は話す。
ボダノフ氏は「装甲車両は開けた場所に決して入っていかない。そんな場所に行けばFPVドローンやより強力なドローンから集中砲火を浴びるだろう」と説明した。
ロシア軍から奪って乗車していたT72戦車は現在、ハルキウ州北東部の雪に覆われた前線近くで防護ネットの下に隠されたままで、実質的には固定砲台の1つに成り下がってしまった。
2022年2月のロシアによる侵攻当初から軍務に従事しているボダノフ氏が目にしてきたのは、テクノロジーの発達によって敵味方とも戦場における新たな計算を迫られ、伝統的な軍事戦術がひっくり返された事態だった。
1機当たりの製造費が数百ドル程度で精密な性能を持つドローン数千機が連日のように1200キロに及ぶ前線に沿って広がった「キルゾーン」を飛び回っている。より航続距離が長く積載能力の高い強力なドローンも合流している。
こうした上空の脅威があるため、配置部隊の交代や避難、戦車攻撃まであらゆる移動は死につながる危険性がより高くなっている。
22年には全死傷者の10%未満だったドローンによる死傷者は、25年時点で最大80%まで跳ね上がった。フランス国際関係研究所(IFRI)は今月公表した報告書で、戦争の大部分が「相互拒否の空中戦」に変貌したと指摘。このような変化を「イノベーションの速度、迅速な順応、継ぎ目のない技術統合によって定義される新たな戦争の論理」の一部と位置づけ、その中には人工知能(AI)を含む他の技術も組み込まれるとの見方を示した。
<逃れられない速度>
ロイターは最近、ロシア軍に包囲されていた東部のコスチャンティニウカ近郊で移動式ドローン迎撃チームを取材したが、こうしたチームが今や一般的な存在になっている。
対ドローンネットで覆われ、焼け焦げた車両の残骸が散乱する道路を巡回しながら、隊員らはFPVドローンからより大型で長距離飛行可能な「シャヘド」まで、あらゆる種類のドローンを絶えず警戒。その任務は、ロシア軍が進撃している前線区域でウクライナ軍の部隊にとって重要な補給路を防衛することにある。
第93機械化旅団の対ドローン部隊に属するコールサイン「マリーン」と名乗ったある隊員は、かつて1時間のうちに54機のドローンが単一目標を攻撃した場面を目撃したことを思い出すと語った。
「3機が旋回し、もう1機が攻撃しながらさらに残りが加わる。これらは常に滞空していて、誰も逃がしてくれない」と振り返る。
実際に攻撃された多くの兵士は、FPVドローンの速度と機動力に圧倒されたと打ち明けた。実際の攻撃の映像は両陣営のソーシャルメディアに多数アップされている。
ハルキウの軍病院で取材に応じてくれた第151独立偵察・打撃大隊所属のドローン操縦士、アンドリー・メスコフ氏(42)は「建物の中に逃げ込んだが、まさか中まで追ってくるとは思わなかった。FPVドローンの素早さは人間と比べものにならない。銃を手に取って撃ち落とす時間さえなかった」と述べた。
<戦場医療への影響>
メスコフ氏は、ヘルメットに跳ね返されたドローンが膝近くで爆発したため、膝を粉砕された。最終的には無人地上車両によって医療搬送され、こうした地上車両は死傷者を最小限に抑えるために後方支援から負傷者搬送まで幅広い任務での利用が増え続けている。
一方拡大する「キルゾーン」がもたらす恐れがある致命的な結果として、負傷者の搬送に要する時間の長期化が挙げられる。メスコフ氏が治療を受けていたハルキウの病院の主任医師、ビアチェスラフ・クリンニー大佐(45)は、ドローンが車両に与える脅威のせいで、医療搬送に要する平均時間は3日を超えるようになったと指摘した。
これは戦場医療における「ゴールデンアワー」、つまり負傷者の命を救うために極めて重要とされる60分以内の処置が極めて難しくなることを意味している。
クリンニー氏は、西側同盟諸国は教訓を学ぶ必要があると強調。「国内で戦争を準備している国は『ゴールデンアワー』などもはや存在しないと認識するべきだ。運が良ければ『ゴールデンデー』がくるかもしれない」と付け加えた。
クリンニー氏の病院には以前、2カ月以上も止血帯が巻かれたままの負傷兵が運ばれてきたことがあった。
<戦車復活できるか>
雪に覆われた戦車の隣に立つボダノフ氏は、このような兵器は無力になりつつあり、より長射程の火砲を優先して配備を減らすべきと考えていると話した。戦車乗員は、より効果的な戦力になるための再訓練に前向きだという。
外交政策研究所の軍事アナリスト、ロブ・リー氏は、戦車は依然として市街戦や悪天候時には使用されるが、装甲主体の攻撃は大半が小規模な歩兵による襲撃で代替されていると分析する。
それでもリー氏は、戦車を早急に見限るべきではないとくぎを刺す。戦争の変化のスピードが速く、戦術はまた変化する可能性があるからだ。
「装甲車両の役割は縮小している。しかし次の技術的なブレークスルーが起きて、再び機動戦が可能になるのが待たれると考えている」と述べた。
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