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インタビュー:高市氏は「安倍路線の継承示せ」、トランプ氏来日で=兼原元官房副長官補

2025年10月17日(金)12時37分

 写真はインタビューに答える兼原信克・元官房副長官補、16日撮影(2025年 ロイター/Tamiyuki Kihara)

Tamiyuki Kihara

[東京 17日 ロイター] - 自民党の高市早苗総裁は日本維新の会と連立政権樹立に向けた協議を続けている。連立が実現すれば21日に召集される臨時国会での首相指名選挙で高市氏が首相に選出される可能性は極めて高い。

日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、今月下旬には米国のトランプ大統領が来日し、日米首脳会談が開かれる予定だ。高市氏はトランプ氏にどう対峙し、どのような外交・安全保障政策を進めるべきなのか。安倍晋三元首相の側近として安保政策を取り仕切った兼原信克・元官房副長官補に話を聞いた。

<日本の安保政策は「4合目」>

「基本的に安倍政権、岸田(文雄)政権の外交安保政策をそのまま遂行していくだろう。あまり心配していない」。兼原氏は開口一番、高市氏への期待を述べた。

現下の安保環境については、最も脅威となるのは中国だと説明。「習近平国家主席は台湾を取り戻すと繰り返し発信している。もし習近平がその気になれば、台湾有事開始はもう止められない」とした上で、「日本は絶対に中国に戦争を起こさせてはいけない。だからこそ、米国との関係をより強固なものにしなければならない」と強調する。米国頼みの平和主義ではなく、日本が積極的に地域の安全保障に関与する必要があるとも語った。

日本の安保体制は本来必要とされるレベルに比して「4合目くらいだ」と指摘。仮にいま中国と戦うことになれば「すぐ負ける。一番怖いのがサイバー攻撃だ。全国が停電しあらゆるインフラがストップするだろう」と危機感をあらわにした。

<維新との連立には好意的>

公明党が自民との連立解消を表明した点に触れ、「四半世紀、自民政権によく付き合ってくれた」とする一方、「安保のために意味のある議論ができることもあったが、現実を踏まえない平和主義とか、単に『これはやめてくれ』という議論が結構出てきて、危険なレベルまで自衛隊の行動を縛ることもあった」と振り返った。

一方、高市氏は維新との連立協議を進めている。公明に比べて安保政策でより自民に近い維新が連立相手となることは、日本の安保政策にどう影響するのか。

兼原氏は「維新が入ってきた後(衆参の議席が)過半数に届くのかがポイントだ」と説明。維新は現下の安保環境の厳しさに敏感だとし、「高市氏の政策方針に合わせてくると思う。政権が右の方向へ振れるということだ」と好意的に捉えた。

<核の議論をタブー視すべきでない>

高市氏が真っ先に取り組むべき課題について、兼原氏は「短期的にはサイバー安全保障だ」と指摘。能動的サイバー防御(ACD)を法制化したものの、「戦争の時に使える法体系になっていない」と述べ、「サイバー攻撃から自衛隊のみならず重要インフラを含めた日本全体を守れる体制を構築しなくてはいけない」と注文を付けた。対外有事を想定したインテリジェンス機能の強化も喫緊の課題として挙げた。

また、「非核三原則」についても議論が必要だと話す。「持ち込ませず」を「中国に『撃ち込ませず』と改めるべきだ」とし、「時代は明らかに変わっている。特に若者は中国に対する危機意識が高い。理解は得られるはずだ」と述べ、核の議論をタブー視するべきではないとの認識を示した。

<トランプ氏来日への備え>

今月下旬にはトランプ氏が来日する予定だ。現時点では高市氏が日米首脳会談に臨む可能性が高い。

高市氏に求められる姿勢について、兼原氏は「まずは安倍元首相が確立してきた21世紀の日本の安保路線は微動だにしていないこと、自分はその路線を継承し強力に進めていくことをトランプ氏に伝えなければならない」と話す。

対中戦略についても「米国だけに寄りかかるつもりはなく、日本も最大限の努力をすると表明すべきだ」とした。その上で、「高市氏は日本の保守政治家の代表だ。トランプ氏は気に入るはずで、『同じ保守政治家同士頑張りましょう』という姿勢で臨めば良い関係が築けるはずだ」と語った。

かねはら・のぶかつ 1981年東大法卒。外務省で北米局日米安全保障条約課長、総合政策局総務課長、国際法局長を歴任。第2次安倍政権で内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。2019年退官。笹川平和財団常務理事。

(聞き手・鬼原民幸)

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