アングル:9月株安の経験則に変調、短期筋に買い余力 総裁選まで株高か

9月は株価が軟調になりやすいというアノマリー(経験則)に変調がみられている。写真は株価を表示するスクリーン。4月15日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Noriyuki Hirata
[東京 18日 ロイター] - 9月は株価が軟調になりやすいというアノマリー(経験則)に変調がみられている。海外短期筋の買い余力が意識される中、米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過。自民党総裁選への期待を背景に、株高のピークは投開票日前後に後ずれするとの見方が出ている。
<予想通りのFOMC、踏み上げトリガーは「予想外」>
「FOMCでの株安を見込んでいた投資家が、踏み上げられる局面に入ってきた」と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは指摘する。FOMCは25ベーシスポイントの利下げで大方の予想通りだったが、東京市場の反応は大方の予想に反し、半導体関連株を中心に株高となった。
事前の投資家のポジションは、イベント後の出尽くしや肩透かしによる株安が警戒され、日経平均先物やAI(人工知能)関連株がショートに傾いていた。それが、損失覚悟で買い戻す「踏み上げ」の局面に入ってきたという。
「日経平均先物のショート(売り)はまだ減っていない。本格的な踏み上げとなるなら、きょうの上昇程度ではとどまらず、5万円の方向に向かってもおかしくない」と窪田氏は話す。
<9月株安アノマリーの行方>
本来なら、9月は前半が株高の場合、後半は売りが強まりやすい傾向があるとJPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは指摘する。2000年以降の株価動向をみると、9月の下落率は平均で0.59%と、1月の0.70%に次いで大きい。とりわけ、9月の前半に上昇した年は、後半に失速するケースが約7割と高頻度となっている。
こうした経験則の背景には、前半の株高を受けた利益確定や、9月半ばが米国で予定納税の時期に当たり市場の資金が細って米株が軟調になりやすく、日本株もつれ安するケースが多いとの見方がある。
ところが今年は、自民党の総裁選という国内固有の要因が、日本株の上昇継続を促すとの見方が出ている。総裁選への出馬意向を表明した高市早苗前経済安保担当相などによる景気刺激策に対して海外投資家は、国内投資家が思っているより強気の相場観を持っていると大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは指摘する。
需給面では、夏場からの株高を受け、四半期末に向けてポートフォリオを一定の資産配分に保つため、金融機関による数兆円のリバランス売りが見込まれる一方、これを2兆円規模の配当再投資の買いが実質的に相殺しそうだという。そこにグローバル資金が日本株を選好する動きが加わることで、株高のピークは、9月後半から総裁選の投開票日前後になる可能性があると大和の木野内氏は話す。
海外勢のうち、とりわけ短期筋は買い余力を残しているようだ。JPモルガンの高田氏は、海外短期筋の一角である商品投資顧問業(CTA)の買いポジションは足元で、最大時の5―6割程度にとどまると分析している。株高の初動で乗り遅れた後発組は、トレンドが崩れていないことが確認されると買いで入ってくることが見込まれるという。
その海外短期筋の後発組は「(資金を借りて投資規模を増やす)レバレッジを効かせながら短期勝負に出てくる可能性がある」ともいう。逃げ足の速い資金でもあり、調整時には値幅を伴う下落につながりかねない。4万5000円から上の水準では「ボラティリティーが高まりそうだ」と高田氏は話している。