ニュース速報
ワールド

アングル:9月株安の経験則に変調、短期筋に買い余力 総裁選まで株高か

2025年09月18日(木)18時34分

 9月は株価が軟調になりやすいというアノマリー(経験則)に変調がみられている。写真は株価を表示するスクリーン。4月15日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Noriyuki Hirata

[東京 18日 ロイター] - 9月は株価が軟調になりやすいというアノマリー(経験則)に変調がみられている。海外短期筋の買い余力が意識される中、米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過。自民党総裁選への期待を背景に、株高のピークは投開票日前後に後ずれするとの見方が出ている。

<予想通りのFOMC、踏み上げトリガーは「予想外」>

「FOMCでの株安を見込んでいた投資家が、踏み上げられる局面に入ってきた」と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは指摘する。FOMCは25ベーシスポイントの利下げで大方の予想通りだったが、東京市場の反応は大方の予想に反し、半導体関連株を中心に株高となった。

事前の投資家のポジションは、イベント後の出尽くしや肩透かしによる株安が警戒され、日経平均先物やAI(人工知能)関連株がショートに傾いていた。それが、損失覚悟で買い戻す「踏み上げ」の局面に入ってきたという。

「日経平均先物のショート(売り)はまだ減っていない。本格的な踏み上げとなるなら、きょうの上昇程度ではとどまらず、5万円の方向に向かってもおかしくない」と窪田氏は話す。

<9月株安アノマリーの行方>

本来なら、9月は前半が株高の場合、後半は売りが強まりやすい傾向があるとJPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは指摘する。2000年以降の株価動向をみると、9月の下落率は平均で0.59%と、1月の0.70%に次いで大きい。とりわけ、9月の前半に上昇した年は、後半に失速するケースが約7割と高頻度となっている。

こうした経験則の背景には、前半の株高を受けた利益確定や、9月半ばが米国で予定納税の時期に当たり市場の資金が細って米株が軟調になりやすく、日本株もつれ安するケースが多いとの見方がある。

ところが今年は、自民党の総裁選という国内固有の要因が、日本株の上昇継続を促すとの見方が出ている。総裁選への出馬意向を表明した高市早苗前経済安保担当相などによる景気刺激策に対して海外投資家は、国内投資家が思っているより強気の相場観を持っていると大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは指摘する。

需給面では、夏場からの株高を受け、四半期末に向けてポートフォリオを一定の資産配分に保つため、金融機関による数兆円のリバランス売りが見込まれる一方、これを2兆円規模の配当再投資の買いが実質的に相殺しそうだという。そこにグローバル資金が日本株を選好する動きが加わることで、株高のピークは、9月後半から総裁選の投開票日前後になる可能性があると大和の木野内氏は話す。

海外勢のうち、とりわけ短期筋は買い余力を残しているようだ。JPモルガンの高田氏は、海外短期筋の一角である商品投資顧問業(CTA)の買いポジションは足元で、最大時の5―6割程度にとどまると分析している。株高の初動で乗り遅れた後発組は、トレンドが崩れていないことが確認されると買いで入ってくることが見込まれるという。

その海外短期筋の後発組は「(資金を借りて投資規模を増やす)レバレッジを効かせながら短期勝負に出てくる可能性がある」ともいう。逃げ足の速い資金でもあり、調整時には値幅を伴う下落につながりかねない。4万5000円から上の水準では「ボラティリティーが高まりそうだ」と高田氏は話している。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中