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アングル:ミュンヘン自動車ショー、欧州メーカーから先行きに厳しい声

2025年09月10日(水)12時53分

 ドイツ南部ミュンヘンで開催中の自動車ショー「IAAモビリティー2025」では、新しく華やかなモデルが相次いで披露されているが、その裏では欧州メーカーからは業界の先行きに対する厳しい声が出ている。写真は独メルセデス・ベンツのブース。9月7日、ミュンヘンで撮影(2025年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

Christoph Steitz Rachel More

[ミュンヘン 9日 ロイター] - ドイツ南部ミュンヘンで開催中の自動車ショー「IAAモビリティー2025」では、新しく華やかなモデルが相次いで披露されているが、その裏では欧州メーカーからは業界の先行きに対する厳しい声が出ている。

背景には、主要市場の1つ中国で値下がりや減益に見舞われているほか、欧州での低調な需要、米国の関税措置があり、各社はコスト圧縮に主眼を置いて世界市場の転換点に立ち向かおうとしている。

ドイツのフォルクスワーゲン(VW)と傘下の高級自動車メーカー、ポルシェの最高経営責任者(CEO)を務めるオリバー・ブルーメ氏は「自動車業界の現在の枠組みで数十年続いてきたパーティー(隆盛期)は終わった。今は方向転換の時だ」と語った。

折しも欧州連合(EU)が導入した2035年までの厳しい気候変動目標達成が危ぶまれる中で、より低価格の電気自動車(EV)を投入する中国メーカーの攻勢に直面しながらも、欧州各社はEVへの軸足移行を一段と迫られつつある。

このためVWやメルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェ、ルノーなどはいずれも守りに入り、今回のIMMモビリティーでは手頃な価格のEVを相次いで発表した。

マッキンゼーによると、欧州メーカーはEUが35年以降エンジン搭載の新車販売を禁止するのをにらみ、32年までに未曾有の350種類に上る新型EVを投入する計画。マッキンゼーのパートナー、パトリック・シャウフス氏は「今後数年間は(欧州メーカーにとって)正念場になるのは間違いない」と述べ、各社は中国勢との競争で劣勢にならないよう、より迅速で簡素化された製品開発が必要になると付け加えた。

今年上半期に中国で販売台数が27%減少したポルシェは、地元の販売店網を調整。ブルーメ氏は市場の将来に懐疑的となり、長期的な粗利益率20%という現在の目標を事実上撤廃している。

ブルーメ氏は「(中国の)高級車市場はもはや存在しない」とロイターに語り、VWグループとして米国への大幅な投資に乗り出していると説明した。

BMWは新たな「iX3」を起爆剤として中国での成長回復を狙う、と話すのはヨッヘン・ゴラーCEO。BMWは、中国での「猛烈な価格戦争」の動向を注視しているという。

27年までに約40種類の新型車を投入するメルセデス・ベンツは、完全電動の「GLC」を中国市場のシェア回復の頼みとしているが、オラ・ケレニウスCEOは、やはり激しい競争は続くとの見通しを示した。

ロイター
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