焦点:中国、最先端兵器で「抑止」狙う 来月大規模軍事パレード

中国が9月3日に実施する「抗日戦争勝利」を祝う軍事パレードは、兵器の進歩を紹介するだけではなく、将来の紛争に備えた兵器の保護と制御のために不可欠な技術もアピールすることになりそうだ。写真は24日、北京で行われたパレードのリハーサルで撮影(2025年 ロイター/Tingshu Wang)
Greg Torode
[香港 25日 ロイター] - 中国が9月3日に実施する「抗日戦争勝利」を祝う軍事パレードは、兵器の進歩を紹介するだけではなく、将来の紛争に備えた兵器の保護と制御のために不可欠な技術もアピールすることになりそうだ。
パレードでは、戦闘機などの航空機、超音速ミサイル、水中ドローン(無人機)に加え、戦車搭載のセンサー、高度な早期警戒・目標捕捉レーダー、対空レーザーなどが登場する。表舞台に展示することで、潜在的な敵対国を威嚇して抑え込もうとする戦略の一環だと一部のアナリストは指摘している。
しかし1979年のベトナム侵攻以来、本格的な実戦経験がない中国軍にとって、将来の紛争でこれらの兵器を効果的に統合して戦う能力があるのかどうかには疑問が残る。
シンガポールを拠点とする安全保障研究者で、S・ラジャラトナム国際研究院(RSIS)のシニアフェローのドリュー・トンプソン氏は、中国人民解放軍が防御や攻撃に使う高度な兵器やシステムを披露する可能性はあるものの、中国の主要な潜在的敵対国は軍事パレードの「派手さ」には萎縮しないだろうと指摘。「パレードはパフォーマンス的なものだが、能力を示すものではなく、中国がこれらをどのように統合し、紛争が起きた場合に効果的に運用できるのかは依然不明だ」と指摘する。
今回のパレードは、中国が台湾周辺と、ベトナムなどと領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島での軍事演習を強化し、東アジアで軍事衝突の懸念が高まっている中で実施される。
「1つの中国」を掲げる中国は台湾を自国領土だと主張し、武力行使の可能性を否定していない。台湾の賴清徳総統は、中国が台湾の主権を握っているとの主張に強く反発し、台湾の住民が自らの未来を決めるべきだと訴えている。
トンプソン氏は、中国は軍事パレードで米国と日本などその同盟国、および台湾の防衛当局を抑え込むことはできなくても、他国を威嚇できる可能性があると話す。その上で、中国がインドやロシアのほか、アジア地域のより小さな国、そして「米国の孤立したリバタリアン(自由至上主義者)」にもメッセージを送っている可能性があるとして、「パレードを見ていると、簡単に気を逸らされてしまう。派手さそのものではなく、その派手さが観察者の視点に与える影響だ。つまり中国は戦う相手としては大き過ぎ、米国の利益のために中国と戦うことは、リスクやもたらす結果に値しないと思わせることだ」との見解を示した。
中国国防省はコメント要請に即座には応じなかった。
<記念パレード>
1945年に日本が降伏し、第二次世界大戦が終わったことを記念した今回のパレードを、防衛当局者と安全保障アナリストはリハーサルのオンライン映像を通じて既に分析している。
パレードを担当する中国軍の当局者は「(武器と装備は)わが軍の技術革新への適応力、変化する戦術パターンへの対応力、そして将来の戦闘を勝利に導く能力を完全に示すことになる」と主張した。
中国軍が戦闘で勝利するためには、現在米国に次ぐ水準とされる軍事衛星ネットワークとサイバー・電子戦力を完全に統合し、それらを近海の支配を効果的に確立するために活用する必要がある。
航空母艦の運用という複雑なパズルを完成させる最重要のピースである、空母搭載用の早期警戒機KJ―600も展示された。
パレードでは戦闘機も注目されそうだ。パキスタンは今年5月、インドとの衝突で中国製戦闘機「殲-10C(J-10C)」を使い、フランス製戦闘機「ラファール」を含むインド軍の戦闘機6機を撃墜したと報告した。
インドは一部の戦闘機が撃ち落とされたことを認めたが、6機を失ったことは否定。今月にはパキスタン軍の6機を撃墜したと発表した。
新型巡航ミサイルのYJ―17、YJ―19、YJ―20も展示される。これらのミサイルは爆撃機や艦船から発射可能で、一部は迎撃が難しい極超音速弾頭を搭載している可能性がある。これらへの対応は、東アジアでの米軍および同盟国が艦船の作戦を立てるのを複雑化させる可能性が指摘されている。
新型中型戦車ZTZ―201は、高度なセンサーと戦闘管理システムを搭載しているとアナリストらが推測している。
一方、通常ならば潜水艦から発射できないほど大きい魚雷の形状をした海中ドローンはアナリストらを困惑させる。
オープンソースデータプラットフォーム、PLAトラッカーの創設者ベン・ルイス氏はこの海上ドローンについて、中国が米国の水中ドローンプログラムを注意深く追っていることを示唆していると言及。運用開始までどれほど時間がかかるのかは不明だとしつつ「中国がこうした兵器を安価に大量生産できるようになった場合、台湾を巡る情勢は急速に悪化する可能性がある」と警鐘を鳴らした。
RSIS防衛戦略研究所のシニアフェロー、コリン・コー氏は海上ドローンの開発は以前から進んでいたものの、中国軍がそれを披露する段階に達していたことに驚きを表明。「このシステムは既に運用されているか、近いうちに運用が始まることを示唆しているようだ」との見方を示した。