おせちにも物価高の波、節約と奮発に二極化 商戦早くも火ぶた

2026年のお正月用おせち料理の商戦が早くも始まっている。写真は、百貨店の催しで展示されるおせち料理の見本。8月26日、東京で撮影(2025年 ロイター/Kentaro Okasaka)
Kentaro Okasaka
[東京 26日 ロイター] - 2026年のお正月用おせち料理の商戦が早くも始まっている。物価高が続く中、おせちにかける予算を削減する節約志向が見込まれる一方、華やかさや豪華さを重視する富裕層向けの100万円の三段重も登場するなど、消費の二極化が進んでいる。
高島屋は26日、報道陣向けの内覧会を開催。おせち担当バイヤーの天笠亜佑子次長は「年末年始の最大9連休を意識し、年末もお正月も何度も楽しめるよう、伝統的なおせちにとどまらないバラエティー豊かなおせちを用意した」とアピールした。
会場には、通販で17年連続人気トップの「高島屋おせち三段重」(税込み2万3200円)など多彩なメニューが並んだ。有名レストランや人気シェフの料理を楽しめるコラボレーションおせちは近年の売れ筋という。35品のメニューから12品または9品を選んで好みの中身に仕立てられる「カスタマイズおせち」も提供する。
一方、1万円以下の「ミニマムおせち」のジャンルでは、一人暮らし向けの「ソロ活おせち」や、絵本付きで食材の由来を学べる「食育おせち」などを取りそろえる。今年は材料費などの上昇で価格が前年比で平均4-5%ほど上がっているという。
そごう・西武も26日、西武池袋本店でメディア向けお披露目会を開いた。「仮面ライダー」を視聴していた世代をターゲットにし、仮面ライダーやショッカーをイメージした食材を配した「推し活」おせちは2万4840円。物価高騰の中でもボリュームと価格に満足してもらえるよう「コスパおせち」を新たに投入した。
ただ、担当者は「百貨店なので、良いものを買いたいという顧客も当然いる。節約ばかりでなく良いものを楽しんでいただきたいという願いも込めた」。茶懐石の名店による和風三段重は17万8200円だ。
東京・銀座に本店を構える松屋は、開店100周年を記念し、有田焼の名門窯の器に日本料理の名店の料理を詰めた三段重を100万円で提供する。価格を据え置いたコスパ重視の商品もある。
松屋が8月18─21日にメールマガジン会員を対象に実施したウェブアンケート(有効回答数1523人)では、元旦を自宅や実家、親せき宅で過ごすと回答した人が87.6%に上った。おせちを「購入する」「一部購入して一部作る」との回答は計77.5%だった。おせちにかける予算は平均2万2049円で、前年の調査から1941円減少。一方、回答の最高金額は100万円だった(昨年は50万円)。
イオンはEC(電子商取引)サイトで今月から、おせち料理を先行予約販売している。昨年販売1位だった和洋中おせちの商品は4-5人前で、75品目に年越しそばを付け、大みそかから楽しめるのがアピールポイント。10万円(税抜き)の五段重は完売している。
過去数年、おせちの価格調査を実施している帝国データバンク情報統括課の飯島大介副係長は、ロイターの取材に、今年の商戦は物価高と節約志向が影響すると指摘した。「去年までは『ハレの日の正月のイベントだから』という部分が大きかったが、そうも言っていられなくなってきており、去年ほどのぜいたくはできないということではないか」と話し、「低価格競争が激しくなるのではないか」と予想する。
また、中間層以上の利用客が多い百貨店・松屋の顧客調査でおせちに費やす平均予算が減少に転じたことは「各社にとって衝撃だと思われ、今後に大きな影響を及ぼしそうだ。イベントでの出費に関しても想定以上に(出費が)引き締められる可能性があり、クリスマス商戦などの戦略見直しも迫られるかもしれない」と分析している。