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注目のFRB議長講演、投資家は早期利下げ示唆期待 市場波乱リスクも

2025年08月22日(金)08時56分

 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が22日、西部ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウム(ジャクソンホール会合)で講演する。写真はウォール街を歩く男性。4月7日、ニューヨークで撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)

Davide Barbuscia

[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が22日、西部ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウム(ジャクソンホール会合)で講演する。

投資家の間では、パウエル氏が早期利下げのシグナルを発信するとの予想が大勢だ。ただパウエル氏とFRBが関税措置に起因するインフレの抑制と労働市場支援のどちらを重視するかで微妙なかじ取りを迫られている上に、トランプ大統領からの利下げ圧力を受けてFRBの独立性も試されるという難しい現在の局面において、想定外の発言が飛び出し、市場に波乱をもたらす可能性もある。

ヌビーンの債券戦略責任者を務めるトニー・ロドリゲス氏は「パウエル氏は、マクロ経済の観点でのインフレデータと雇用情勢を巡る綱渡りに加え、普段は存在しない政治的な綱渡りも強いられている。これは信じられないほど厳しく厄介な状況だ」と指摘した。

足元の経済情勢に目を向けると、非農業部門雇用者数は7月が低調にとどまっただけでなく5、6月分が大幅下方修正され、FRBの利下げ観測が強まった。一方で7月卸売物価指数が跳ね上がり、9月の次回連邦公開市場委員会(FOMC)で50ベーシスポイント(bp)の大幅利下げが決まるとの期待は消滅した。

消費は今のところしっかりしているが、関税の価格転嫁に伴う家計負担が今後どの程度になるのかまだ見えない面がある。

こうした中でステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏は「パウエル氏は9月FOMCでの利下げ再開を示唆すると見込んでおり、市場はその知らせを歓迎するだろう。しかし将来の利下げ経路に関してパウエル氏はあまり明確にし過ぎるのはためらうと思う」と述べた。その理由として挙げたのは、関税が物価に及ぼす影響の確度がなお低い点だ。

<流動性低下で反応過大に>

投資家が想定する最大のリスクは、パウエル氏が早期利下げに否定的な考えを示し、資産価格が下落する事態で、現在は市場は夏枯れで流動性が乏しいため、市場の反応が過大になる恐れも出てくる。

ヌビーンのロドリゲス氏は「8月最終週の前で金曜日という点から、流動性がやや低下する結果として市場は不安定化への耐性が幾分弱まるかもしれない。(これが)何か予想外の値動きにつながるのではないか」と懸念を示した。

折しも今週のハイテク株売りで浮き彫りになったように米国株には長らく割高感がくすぶり、さらに今後は成長停滞と物価高が併存するスタグフレーションに陥れば、FRBが株価を支える力も限られるとの不安も聞かれる。

D・A・ダビッドソンのジェームズ・レーガン共同最高投資責任者は「スタグフレーションはリスクだ。(その環境下で)パウエル氏が9月利下げ期待を後退させるようなことをすれば、株価は下落し、恐らく少なくも一時的には債券利回りが上がると思う」と述べた。

確かに7月卸売物価指数発表後に9月の大幅利下げ観測が消えた以上、インフレを重視するパウエル氏が利下げに慎重になる抵抗感は薄れるだろう。

2022年のジャクソンホール会合では、パウエル氏はかつてFRB議長を務めたポール・ボルカー氏のタカ派姿勢を踏襲して見せた。今年の場合も、物価上昇率がFRBの目標である2%より1ポイントほど高く、雇用動向も軟化したとはいえまだ健全さを保っているので、利下げに関してより細かいニュアンスを込めた発言をするのも選択肢の1つになり得る。

ただニューバーガー・バーマンのウエルスマネジメント部門最高投資責任者を務めるシャノン・サコシア氏は、パウエル氏がバランスの取れたメッセージを送っても、タカ派的と受け止められ、向こう数週間の株と債券の振幅を拡大する可能性があるとの見方を示した。

サコシア氏は「私の顧客に対する助言は、ボラティリティーに備えろということだ」と勧めた。

ロイター
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