アングル:トランプ氏が選ぶFRB新理事、バイデン氏指名理事が対抗勢力に

トランプ米大統領(写真)が、空席となる連邦準備理事会(FRB)理事ポストの後任候補を間もなく指名することで、バイデン前大統領が指名した3人の理事とパウエル議長の去就に注目が集まりそうだ。2017年11月、ワシントンで撮影 (2025年 ロイター/Carlos Barria)
Howard Schneider
[ワシントン 6日 ロイター] - トランプ米大統領が、空席となる連邦準備理事会(FRB)理事ポストの後任候補を間もなく指名することで、バイデン前大統領が指名した3人の理事とパウエル議長の去就に注目が集まりそうだ。新理事が金融政策やFRBの運営を大幅変更しようとした場合でも、この4人が強力な対抗勢力となり得る。
クーグラーFRB理事が1日に突然辞任の意向を発表したことで、トランプ氏は来年5月のパウエル議長の任期終了を待たずに空席を1つ埋め、次期議長候補として待機させることが可能になった。あるいは、トランプ氏がウォラー理事を議長に昇格させる場合でも、今回の指名によってトランプ氏を支持する理事が1人増えることになる。
トランプ氏は「間もなく」候補者を発表する予定だと述べた。しかし、FRBの政策メンバーは長い年月をかけて入れ替わる制度設計になっているため、これでトランプ氏のFRBに対する不満が解消されるとは限らない。
元FRB副議長で、現在はブルッキングス研究所のシニアフェローであるドナルド・コーン氏は「だれが就任しようとも、全ての意思決定者間で合意を形成する必要がある。議長は非常に強力な権限を持っている。しかし、決定は理事会と連邦公開市場委員会(FOMC)によって行われる。議長は議論に勝ち、正しい主張をすることで、他のメンバーを賛同させる。誰であれ、すぐに物事を変える力は持たない。他の人々を説得しなければならない」と語った。
トランプ氏は、政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートの引き下げを支持する人物を指名すると宣言している。同氏は現行4.25―4.50%のFFレート誘導目標を1%まで引き下げるよう求めている。
だが、FRB議長は威信こそ大きいが、上級職員の採用、予算編成、広大な組織の人員配置といった重要な内部問題に関しては理事会の7票のうち1票を有するに過ぎない。また、金利や市場とのコミュニケーション政策などの金融政策を決めるFOMCにおいては、12票のうち1票を持つだけだ。
パウエルの後任は、強い野心を持って就任するかもしれない。ただ、バイデン氏が指名した理事らと12の地区連銀総裁の支持を得る必要があり、パウエル氏が議長退任後も理事として留任することを選んだ場合、同氏の支持も必要だ。パウエル氏のFRB議長としての任期は約 9カ月後に終わるが、トランプ大統領の任期満了となる2028年1月まで理事にとどまる可能性は残されている。
<限界>
パウエル氏は将来の計画についてまだ表明していない。従来、FRB議長が退任後に理事を続けることはなかった。
次期FRB議長は、バイデン氏が指名したジェファーソン副議長、クック理事、バー理事を説得する必要が生じる。3人の任期は2032年以降だ。
パウエル氏が理事に留任した場合、同氏と3人で理事会の過半数を占め、FRBの運営や規制に関する決定を左右することになる。
政策金利の決定に関しても、理事らは地区連銀総裁5人とともにFOMCを構成するため、パウエル氏が議長任期終了後に理事としてとどまるか否かに関わらず強い影響力を行使することができる。
トランプ氏が指名したウォラー理事やボウマン理事も、抜本的なFRB改革に同意する保証はない。特にウォラー氏は、ウォーシュ元理事らが提案したFRBのバランスシートの大幅縮小など、いくつかの案をすでに退けている。
FRBの金融政策担当部門の元責任者で、現在はイェール大経営学大学院の教授であるビル・イングリッシュ氏は「真に広範な改革は非常に困難だろう(中略)次期議長が達成できることは限られている」と述べた。
また、他の独立機関のトップとは異なり、FRB議長はグローバルな債券市場という強大な利害関係者の審判も受ける。
ジェファーソン、クック、バーの3氏はいずれも、いつまで理事にとどまるのかについて言及していない。