ハマスの支援物資窃盗「証拠なし」 米政府内部分析 国務省は反論

7月25日、米政府の内部分析によると、米国が資金援助した人道支援物資をパレスチナの武装組織ハマスが組織的に盗んだ証拠は見つからなかった。写真はガザの検問所に置かれた物資。24日撮影(2025年 ロイター/Amir Cohen)
Jonathan Landay
[ワシントン 25日 ロイター] - 米政府の内部分析によると、米国が資金援助した人道支援物資をパレスチナの武装組織ハマスが組織的に盗んだ証拠は見つからなかった。
イスラエルと米国は、ハマスによる窃盗を主な理由として、武装した民間援助団体「ガザ人道基金(GHF)」を支援してきた。
米国務省は分析結果に異議を唱えている。
内部分析は、米国際開発庁(USAID)の部局が実施。2023年10月─25年5月に報告があった人道支援物資の盗難・紛失156件を調査した。ロイターが入手したスライド資料によると、ハマスがこうした支援物資から利益を得たという「報告はない」としている。
これに対し、米国務省報道官は、ハマスによる略奪の証拠映像があると反論したが、証拠映像は示さなかった。
ガザへの物資搬入を管理するイスラエルは、ハマスが支援物資を盗み、住民支配や資金源に利用していると主張。イスラエル軍はハマスが支援物資の最大25%を横領したとしている。ハマスはこの疑惑を否定している。
USAIDの分析によると、報告された物資の盗難・紛失156件のうち、少なくとも44件はイスラエルの軍事行動が直接または間接的な原因だった。空爆、避難命令、高リスクの配送ルート強制などが含まれる。イスラエル軍はこの指摘についてコメントしていない。
また、63件は犯人不明、35件は武装した人物、25件は非武装の人物、11件はイスラエル軍の直接行動、11件は腐敗した下請業者、5件は「腐敗した活動に従事する」援助団体職員による窃盗、6件は状況不明とされている。
ガザ地区では食料不足が深刻化し、国連世界食糧計画はパレスチナ人の約4分の1が飢餓状態にあると警告。子どもの餓死も報告されており、人道危機が深まっている。
GHFは、ハマスによる物資管理を阻止するため直接配布を試みているが、国連などからは国際人道原則の中立性に反するとして協力を拒否されている。トランプ政権は1月に米国の対外援助を凍結し、USAIDの解体を進めている。
国連は、イスラエル軍が食料を求める1000人以上の人々を殺害したと推定。その大半はGHFの武装した配布場所近くで発生している。GHFは、米中央情報局(CIA)元職員と元米軍退役軍人が運営する営利目的の米物流会社を利用している。