EXCLUSIVE-米ミサイル防衛、マスク氏のスペースXが主要部受注の最有力候補に

トランプ米政権のミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構築計画で、イーロン・マスク氏のロケット・衛星会社スペースXが主導する連合が重要部分を担う最有力候補に浮上している。スペースXロケット打ち上げ管制センターでのマスク氏、トランプ氏ら、昨年11月の代表撮影(2025年 ロイター)
Mike Stone Marisa Taylor
[ワシントン 17日 ロイター] - トランプ米政権のミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構築計画で、イーロン・マスク氏のロケット・衛星会社スペースXが主導する企業連合が重要部分を担う最有力候補に浮上している。関係者6人が明らかにした。受注すれば、収益性の高い軍需産業にシリコンバレーの企業が参入することになる。
ゴールデン・ドームは、イスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」の米国版。トランプ氏は1月27日の大統領令でミサイル攻撃を「米国が直面する最も壊滅的な脅威」と指摘している。
関係筋によると、スペースXは、データ解析のパランティア、ドローン(無人機)メーカーのアンデュリルと組んで、システム主要部分の入札に参加している。マスク氏はトランプ政権入りしており、パランティア、アンデュリル両社の創業者もトランプ氏の支持者だ。
3社は最近、トランプ政権と国防総省の高官に面会し、地球を周回する400─1000基以上の衛星を建造・打ち上げてミサイルを検知・追跡する計画を提案した。これとは別に、ミサイルやレーザーを搭載した200基の攻撃衛星の艦隊がミサイルを撃墜する計画だが、スペースX連合は衛星の武装化には関与しない見込みという。
国防総省は、3社連合に前向きな姿勢を示しているという。ただ発注先選定プロセスはまだ初期段階で、今後数カ月で状況が変わる可能性があると関係筋は指摘した。
事情に詳しいある関係者は、今回の協議は「通常の調達プロセスから逸脱したもの」とし、「国家安全保障・防衛当局は、政府での役割ゆえにイーロン・マスク氏に配慮し、敬意を払うべきという姿勢がある」と述べた。
スペースXとマスク氏はコメントを拒否した。
国防総省はロイターの質問には直接回答せず、大統領令やホワイトハウスの指針とスケジュールに沿って、トランプ氏に選択肢を提示すると述べた。
<定額課金サービス>
スペースX連合は、ゴールデン・ドームで担う業務を「サブスクリプション(定額課金)サービス」で提供することを提案した。米政府は、システムを直接所有するのでなく、技術のアクセスに対価を支払うことになる。
関係筋によると、サブスクリプションモデルにすると国防総省の調達手順の一部を飛ばして、手続きが迅速化する可能性がある。一方、政府には継続的な支払い義務が生じ、開発や価格設定で主導権を失う可能性がある。大規模かつ重要な防衛プログラムで定額課金システムというのは異例で、国防総省では一部、慎重論があるという。
米当局者によると、ゴールデン・ドーム計画には180社以上が関心を寄せている。有力軍需企業ロッキード・マーチンは、マーケティング活動の一環としてウェブページを立ち上げた。
一部の専門家は、ゴールデン・ドームの総費用は数千億ドルに達する可能性があるとみる。国防総省は2026年初めから30年以降までの計画でシステム導入を検討している。
一方である情報筋は、スペースXなどには国家の防衛システム全体を提供した経験がなく、新技術を使い費用対効果の高い方法で構築できるかは不透明だと述べた。
また、上院軍事委員会のジーン・シャヒーン議員(民主党)は、マスク氏が政権の職務に就く中で連邦政府の契約に入札することに懸念を表明。「世界で最も裕福な人物が特別政府職員となり、政府契約を通じて自分の企業に流れ込む何十億ドルもの税金に影響力を及ぼせるとなると、それは深刻な問題だ」と述べた。