ニュース速報
ワールド

ノーベル物理学賞に米カナダの研究者、AIの基礎築く

2024年10月09日(水)08時48分

スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2024年のノーベル物理学賞を人工知能(AI)の機械学習の基礎となる手法を開発した米プリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授と、カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授に授与すると発表した。提供写真。(2024年 ロイター)

Niklas Pollard Johan Ahlander

[ストックホルム 8日 ロイター] - スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2024年のノーベル物理学賞を人工知能(AI)の機械学習の基礎となる手法を開発した米プリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授(91)と、カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授(76)に授与すると発表した。

科学アカデミーは「両氏は物理学のツールを使用して、今日の強力な機械学習の基礎となる手法を開発した」と評価し、「人工ニューラルネットワークに基づく機械学習は現在、科学、工学、日常生活に革命をもたらしている」と述べた。   

ヒントン氏は、データ内の特性を自律的に見つけ、写真内の特定の要素を識別するなどのタスクを実行できる手法を発明した。自らが開拓した技術の危険性についてより気軽に語れるよう昨年グーグルを退職したことで話題になった。英国生まれで現在トロント大学名誉教授。

カリフォルニア州のホテルでノーベル賞記者会見の電話インタビューに応じ「自分たちよりも賢いものがどんなものなのか、私たちは経験していない」と述べ、「医療などの分野では多くの点で素晴らしいことになる」と指摘。一方で「さまざまな悪い結果も懸念しなければならない。特に、こうした技術が制御不能になる恐れがあることだ」と語った。

プリンストン大学名誉教授のホップフィールド氏は、データ内の画像やその他の種類のパターンを保存し、再構築できる連想メモリを開発した。

プリンストン大主催の会見で「十分に複雑で大規模なシステムになると、そこに組み込んだ素粒子からは到底推測できないような特性を持つようになる」とし、「そのシステムには新たな物理学が含まれていると言わざるを得ない」と述べた。

ヒントン氏の懸念に同調し、AIの未知の可能性と限界について不安を感じることがあると語った。

機械学習やその他のAIを巡る懸念について質問されたノーベル物理学賞委員会のムーンズ委員長は「機械学習には多大なメリットがあるが、その急速な発展は我々の将来に対する懸念も引き起こしている」と語った。

「人類は集団として、人類の最大の利益のために、この新しい技術を安全かつ倫理的に使用する責任を負っている」と強調した。

物理学賞は今週授与される2番目のノーベル賞。賞金は1100万スウェーデンクローナ(110万ドル)で両氏で分け合う。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中