ニュース速報
ワールド

焦点:ハリス氏支える側近集団、政治経験豊富なベテランぞろい

2024年08月05日(月)15時57分

 8月2日、米民主党の大統領候補指名を確実にしたハリス副大統領には、11月の本選に向けて選挙戦のギアを上げるにあたって、頼れる側近グループがいる。写真はハリス氏と夫のダグラス・エムホフ氏。デラウェア州ウィルミントンで7月代表撮影(2024年 ロイター)

Nandita Bose Trevor Hunnicutt Jeff Mason

[ワシントン 2日 ロイター] - 米民主党の大統領候補指名を確実にしたハリス副大統領には、11月の本選に向けて選挙戦のギアを上げるにあたって、頼れる側近グループがいる。これらの側近の多くは過去何十年にもわたって民主党の政治活動に携わり、その能力の高さを証明してきた黒人女性たちだ。

例えばカリフォルニア州選出のバトラー上院議員は、MSMBCの番組でハリス氏が性差別的、人種差別的な攻撃を受けるとみられる点について聞かれると「望むところだ。私たちにとってこの手の攻撃は何の目新しさもない」と強気に受けて立つ構えを示した。

結束の固いハリス氏側近グループは忠誠心が厚く、同氏の政治キャリアに磨きをかけることに情熱を注いでいる。同氏が2017年、上院議員としてワシントン政界に初めて足を踏み入れて以来ずっと面倒を見てきた人々も多いことが、ロイターが事情に詳しい4人の関係者に取材して分かった。

関係者の話では、側近の一部はバイデン大統領が2020年の選挙戦でまだ副大統領候補に女性を起用するとしか発表していなかった段階で黒人女性、特にハリス氏を選ぶようひそかに働きかけたという。

側近グループを構成するのは、民主党全国大会運営委員会のミニョン・ムーア委員長や、規則委員会共同委員長のリー・ドートリー氏、民主党全国委員会メンバーのドナ・ブラジル氏、元副大統領首席補佐官のティナ・フロノイ氏らだ。

多くは1993ー2001年のクリントン政権時代に何らかの公職に就いており、政治権力の裏表を熟知している。

ハリス氏としては、選挙戦の滑り出しこそ非常に順調だったとはいえ、これらの側近の全面的な支援が今後必要になるだろう。

なぜならハリス氏は、最も人口が多いカリフォルニア州選出の上院議員経験があるものの、なお全米レベルでの政治家として合格点を得られるかどうかテストされていないからだ。直近の世論調査では、幾つかの激戦州で共和党候補のトランプ前大統領に対して支持率で劣勢に立っているという面もある。

民主党のストラテジスト、アンソニー・コーリー氏は、ハリス氏は接戦に直面しており、一連の攻撃に対処する態勢を整えなければならないと指摘した。

トランプはハリス氏に「常軌を逸している」「愚か者」「とてつもない馬鹿」などの罵声を浴びせ、ハリス氏が黒人である出自を以前は前面に出さなかったと問題視。共和党議員の一部は、ハリス氏は能力ではなく多様性への配慮で副大統領になったと揶揄している。

コーリー氏は、このような既にやり方が分かっている戦いでは、ハリス氏にとって側近グループが本選まで大いに役立つ存在になると予想している。

<選対本部でも活躍>

ハリス氏の選対本部においても、ホワイトハウス運営や選挙の経験が豊かな女性たちが重要な役割を担っている。

副大統領首席補佐官のローレン・ボレス氏や、副首席補佐官エリン・ウィルソン氏、選対本部をまとめるシーラ・ニックス氏、副大統領情報発信責任者を務めるクリステン・アレン氏たちだ。

ボレス氏はワシントン政界でベテランのコミュニケーションアドバイザーで、ハリス氏側近グループ内に混乱が生じた後、内部を落ち着かせる上で多大な貢献をしたと評価されている。

クリントン大統領の副報道官だったボレス氏はその後、アル・ゴア副大統領やヒラリー・クリントン上院議員の情報発信責任者にも従事した。

民主党ストラテジストのジョエル・ペイン氏は、ハリス氏の側近グループは20年のバイデン氏、あるいは12年と08年のオバマ氏の選挙戦で有権者を一つにまとめ上げた経験を持つと説明。「彼らは過去の民主党政治の時代を引き継ぎ、そこで生まれた連携をどう再建するかを理解している」と述べた。

<トランプ陣営にない強み>

ムーア氏やドーティー氏、ブラジル氏、フロノイ氏らは、クリントン政権や民主党全国委員会などで得た経験をハリス氏に伝授し、ハリス氏が副大統領になってしばらく党内で全面的に受け入れられなかった局面を乗り切る上で力を貸した。

側近グループはハリス氏に、ワシントン政界に関する突っ込んだ知見や実力者とのパイプももたらしている。ハリス陣営幹部でバイデン政権の住宅都市開発長官を務めたマルシア・ファッジ氏はロイターに「トランプ陣営が持つことができないほどの経験をハリス氏に届けている」と語り、ハリス氏のトランプ氏に対する優位につながるとの見方を示した。

ハリス氏と労組の橋渡し役となっているのはバトラー上院議員だ。ハリス氏がサンフランシスコの地区検事だった2000年代初めからの知り合いだったバトラー氏は、20年の選挙でハリス氏のアドバイザーにもなった。

全米自動車労組(UAW)はハリス氏支持を正式に表明し、激戦州ミシガンの選挙戦でハリス氏にプラスとなりそうだ。

専門家の1人は、ハリス氏側近グループは同氏が中道政治家としてイメージされつつ、左派有権者にもアピールできる立ち位置になるよう後押ししていると分析。「どうすればハリス氏を穏健派と位置づけられるか分かっている」という。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平案「合意の基礎に」 ウ軍撤退なけれ

ワールド

ウクライナ、和平合意後も軍隊と安全保障の「保証」必

ビジネス

欧州外為市場=ドル週間で4カ月ぶり大幅安へ、米利下

ビジネス

ECB、利下げ急がず 緩和終了との主張も=10月理
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中