ニュース速報
ワールド

アングル:バイデン氏、予備選「初戦」で圧勝できるか 年齢問題などで支持離れも

2024年01月12日(金)18時27分

 米東部ニューハンプシャー州で23日、大統領選の民主党候補を選ぶ予備選が行われる。写真はディーン・フィリップス下院議員。ニューハンプシャー州マンチェスターで8日撮影(2024年 ロイター/Brian Snyder)

Jarrett Renshaw

[マンチェスター(米ニューハンプシャー州) 11日 ロイター] - 米東部ニューハンプシャー州で23日、大統領選の民主党候補を選ぶ予備選が行われる。現職のバイデン大統領が苦戦する公算は極めて乏しいが、もしそうなれば、ティム・フィッツパトリックさん(24)のような一部の有権者の心情が反映されるからだろう。

大学生のフィッツパトリックさんは2020年の大統領選でバイデン氏に投票したが、現在はバイデン氏の化石燃料プロジェクト支持や、学生ローン返済免除を確実に実行できなかったことにうんざりし、81歳という高齢で果たして2期目を全うする元気があるのか非常に心配している。

フィッツパトリックさんは、民主党の候補指名争いに名乗りを上げている1人だが知名度の低いフィリップス下院議員に触れて「私と彼は政治信条が一致しているとは言えない」と話しながらも、バイデン氏に比べれば評価できるので、今回支持することを決めたと明かした。

実際複数の世論調査では、有権者の間でバイデン氏の年齢に対する懸念の大きさが浮かび上がっており、20年と同じく共和党候補がトランプ氏となった場合、本選で勝つのに苦心することが示唆されている。

そうした中、ニューハンプシャー州の予備選でフィリップス氏や、同じ泡沫候補の女性作家ウィリアムソン氏が予想外に健闘すれば、バイデン氏再選への疑念が高まりかねない。

今年の同州予備選は異例の形になっている。民主党全国委員会が2月3日の南部サウスカロライナ州予備選を、党候補選びの初戦にすると決定したのを無視し、長年にわたって全米で最初の予備選を開催してきたニューハンプシャー州側が今月23日に日程を押し込んだためで、バイデン氏陣営は正式にはニューハンプシャー州予備選への参加を見送ると表明した。

それでも政治評論家の見立てでは、この予備選でバイデン氏が楽勝するとみられる。ニューハンプシャー大学が今週実施した調査では、同州有権者のバイデン氏支持率は69%で、フィリップス氏の7%とウィリアムソン氏の6%を大きく引き離している。

ただロイターが、予備選で投票するつもりという数十人余りの同州の民主党員と無党派層有権者に話を聞くと、大多数はまだ態度を決めていないか、フィリップス氏もしくはウィリアムソン氏に票を入れると答えており、バイデン氏が確実に大差で勝つとは言い切れない。

地元ブロガーのデール・コイさん(70)は「バイデン氏の年齢は私にとって現実的な問題になる。80歳になれば精神エネルギーの面でさまざまな差しさわりが出始めるからだ」と述べ、今回はフィリップス氏を支持するだろうとしている。

<弾みはつかず>

そのフィリップ氏は今週になっても、選挙戦に勢いが出てきた気配はほとんどうかがえない。同氏が開いた選挙イベントは大人数を集められず、遊説に同行する報道陣のために用意したバンは空席だらけ。

同氏がこれまでで最も多くの人を呼び寄せたのは、マンチェスターのホテルで開催したウィリアムソン氏との討論会だが、ほとんどの聴衆は遠足に来ていた高校生で、選挙権はない。

9日には屋外に選挙カーを止めてコーヒーを差し出しながら有権者に話しかけようとしたが、有権者は1人も姿を見せなかった。

フィリップ氏が打ち出す政策は、新生児に投資のための1000ドルを贈ることや、均衡的な連邦財政、富裕な大学に課税して中間層の教育資金を支援することなど。同氏がこれまでに中心的な争点として提起しているのは世論調査におけるバイデン氏の支持伸び悩みだ。

フィリップス氏は、民主党が強力な戦術を駆使し、見込みのある対抗馬の出現を封じ込めようとしているのは、米国で最も危険な政治家であるトランプ氏に利するだけだと批判している。

選対本部におけるロイターのインタビューでは「負ける確率が高いレースだと分かっていながらそこに突入しつつ、別の候補を抑圧するなら、敗北に加担することになると信じている」と語った。

一方バイデン氏陣営は、足元の世論調査結果が振るわなくても、選挙戦が進んでトランプ氏とバイデン氏の一騎打ちの構図が鮮明になれば、不安に駆られた民主党員が11月の本選でバイデン氏の下に結集すると自信を見せる。

ニューハンプシャー州でバイデン氏に不満を持つ人々でさえも、そうした展開になりそうだと認めている。

フィッツパトリックさんは「バイデン氏の方がトランプ氏よりましなのは明らかだ。はなはだ不本意だが仕方なく受け入れることになる」と話した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中