ニュース速報

ワールド

新型コロナ、米で未認証のマラリア薬投与拡大 トランプ氏が推奨

2020年04月08日(水)08時49分

新型コロナウイルス感染症の患者が急増しているニューヨーク州など米国の一部の地域で、入院患者への抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」の投与が急速に拡大している。写真は3月31日、ワシントン州シアトルで撮影(2020年 ロイター/Lindsey Wasson)

[ニューヨーク/ロサンゼルス 7日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染症の患者が急増しているニューヨーク州など米国の一部の地域で、入院患者への抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」の投与が急速に拡大している。

ヒドロキシクロロキンは、トランプ大統領が新型コロナ治療薬として導入を強く主張しているが、効果は実証されていない。

ロイターの調査によると、ニューヨーク、ルイジアナ、マサチューセッツ、オハイオ、ワシントン、カリフォルニア州で病院を展開する6社以上の大手医療チェーンが、新型コロナ感染症の入院患者にヒドロキシクロロキンを日常的に投与している。ただ、現場の医師は効果があるかどうかは不透明だと話している。

米国では35万5000人以上が新型コロナに感染。1万人以上が亡くなっている。連邦政府は最大で24万人の死者が出る恐れがあると推定している。

新型コロナ感染症は現時点で有効な治療法が見つかっておらず、現場の医師は、ごく一部の研究で効果を発揮する可能性が指摘されているヒドロキシクロロキンとその類似薬「クロロキン」を症状の悪化した患者に投与している。

一部の医師によると、トランプ大統領などがヒドロキシクロロキンの利用を呼びかけていることもあり、患者から投与を求められるケースも出ている。

新型コロナの検査で陰性反応が2回出ているトランプ大統領は4日、ヒドロキシクロロキンについて「自分なら投与を受けるかもしれない」と発言。「非常に前向きな話を聞いている。今後もデータの収集を続ける」と述べた。

ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)は6日、ヒドロキシクロロキンの有効性を巡って、週末に政府内で対立があったことを認めた。ニュースメディアのアクシオスによると、4日の会合では有効性が証明されていないと主張する国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長とナバロ氏が激しく衝突したという。[nL4N2BU39T]

ヒドロキシクロロキンは失明や心臓疾患など副作用のリスクが指摘されているが、ロイターの取材に応じた複数の医師は、副作用のリスクは比較的低いため、数日間の短期の投与であれば問題ないと指摘。価格も安く、入手しやすいと話している。

ただ、どの段階の患者に投与するのか、他の薬と併用するのかなど、投与の方法は医療機関によってまちまちだ。

また、ヒドロキシクロロキンが効果を発揮する可能性を指摘した一部の研究では、軽症者や初期段階の患者が臨床試験の対象となっており、薬の投与がなくても回復していた可能性がある。

入院患者は重症者が多く、現場の医師はヒドロキシクロロキンに効果があるかどうか判断は難しいと話している。

ニューヨークで23の病院を展開するノースウェル・ヘルスの幹部は「新型コロナ感染症の重症患者数百人を診てきたが、大半の患者がヒドロキシクロロキンを投与されている」とした上で「まだ非常に初期の段階だが、個人的には患者に劇的な回復はみられないと感じている」と述べた。

マサチューセッツ州のレーヘイ・ホスピタル&メディカル・センターの医師も、約30人の患者にヒドロキシクロロキンを処方したが「患者に著しい改善」はみられないという。

この医師は「症状の軽い患者にはある程度の効果があったのかもしれないが、集中治療室に入るようなレベルの患者については、進行を遅らせる効果はみられない」と語った。

<集中治療室から生還>

一方、新型コロナ感染症で一時、集中治療室に入ったニューヨーク在住のデビッド・ラットさん(44)は、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、クラザキズマブ、カレトラを投与され、病状が劇的に回復し、集中治療室を出た。

ラットさんによると「医者は何が回復につながったのかまだ結論を出していない」という。

ただ一部の医師は、ヒドロキシクロロキンの投与を推奨している。

仏マルセイユの研究チームによると、新型コロナ感染症の軽症患者80人にヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンを投与した結果、8日後には93%の患者でウイルスが検出されなかった。

中国の臨床試験でも、まだ初期段階だが、まちまちの結果が報告されている。

臨床試験は規模が小さいケースや、薬を投与していない患者との比較が行われていないケースも多く、ヒドロキシクロロキンの効果はまだ実証されていない。

現在進められている治療法が有効と証明されるには数週間から数カ月かかるとみられている。

*見出しの表記を修正して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ2都市にロシアが攻撃、和平協議直後

ビジネス

乳児ボツリヌス症の集団感染、バイハート社の粉ミルク

ワールド

北朝鮮抑止「韓国が主な責任」、米国防総省が関与縮小

ワールド

トランプ政権のEVインフラ助成金停止は違法、米地裁
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 9
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 10
    3年以内に日本からインドカレー店が消えるかも...日…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中