ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ政権半年、8人に1人が「今なら投票せず」

2017年07月22日(土)10時27分

 7月20日、昨年11月の米大統領選でドナルド・トランプ候補に投票した有権者の約8人に1人が、トランプ氏大統領就任後の6カ月の混乱を目の当たりにし、再び同氏に投票するかは分からないと、ロイター/イプソスの調査で回答した。写真は、ホワイトハウスが主催した米国製品の展示会でカウボーイハットをかぶるトランプ米大統領。ワシントンで17日撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 昨年11月の米大統領選でドナルド・トランプ候補に投票した有権者の約8人に1人が、トランプ氏大統領就任後の6カ月の混乱を目の当たりにし、再び同氏に投票するかは分からないと、ロイター/イプソスの調査で回答した。

昨年の米大統領選の有権者を対象に実施された同調査では、11月8日の選挙当日にトランプ氏に投票した人の大半が、再び同氏を支持すると回答した。一方で、同氏を勝利へと導いた、年配で不満を持つ、主に白人の有権者層で支持が低下しており、同氏に潜在的な課題をもたらしている。

僅差で大統領選を制したトランプ氏は、分断した米議会で自身の政策を通すため、また、2020年の大統領選で勝利して続投するために、支持者を1人残らず結集する必要がある。

今回の調査は、大統領選挙当日にロイター/イプソスの調査に応じ、誰に票を投じたか明らかにしていた有権者を対象に実施。他の各調査がトランプ支持者における幻滅の度合いを明らかにする一方、ロイター/イプソスによる調査はどれくらい多くの支持者が同氏に投票するのをやめるかを示している。

同調査は、5月と7月の2回にわたって実施された。

7月の調査では、回答者の12%が、「もし昨年の大統領選が今日行われた場合」はトランプ氏に投票しないと答えた。うち、どうするか「分からない」との回答は7%、他の候補者に投票または棄権すると答えたのは5%だった。88%がトランプ氏に再び投票すると回答し、5月に実施した調査での82%からやや増加している。

こうした結果から総合的に言えるのは、トランプ氏が属する共和党が医療保健制度改革に相次いで失敗し、自身の選挙陣営とロシアとのつながりを巡る複数の調査が行われているにもかかわらず、同氏の立場は支持基盤に支えられ、過去数カ月の間でやや改善しているということだ。

確かに、大統領在任期間が長ければ長いほど、ほとんどの大統領は中核的な支持層の支持低下に直面する。ギャラップの調査によると、オバマ前大統領の支持率は、民主党員とマイノリティーの有権者の間で急落したが、それが起きたのは1期目の後半になってのことだった。しかし、選挙人の数でトランプ氏よりも大差で勝利したオバマ氏は、中核的な支持層のつなぎ留めにそれほど頼らずに済んだ。

少数派ではあるが、再びトランプ氏に一票を投じないと答えた支持者は、心変わりしたさまざまな理由について語ってくれた。

トランプ氏が毎日のように民主党議員やメディア、司法を挑発するような発言をすることに嫌気がさした人もいれば、トランプ政権が自分たちのコミュニティーから不法移民をいまだに一掃していないことに失望したという人もいる。また、期待していたほどトランプ大統領が政治への不信感と度を越した党派政治を終わらせていないと語る人もいた。

<Tシャツ政治>

「誰に投票したか書いてあるTシャツを着て歩かなくてはいけないなら、異なる投票になったかもしれない」

こう語るのは、トランプ氏に一票を投じたビバリー・ガイさん(34)だ。ガイさんは7月の調査に協力した1人。今、選挙が行われるのであれば、リバタリアン党のゲーリー・ジョンソン氏に投票するという。

ガイさんがトランプ氏に投票したのは、民主党のヒラリー・クリントン候補を支持しないことが主な理由だった。トランプ氏のことはそれほど気にしたことがなく、今では友人の多くを怒らせた投票の決断について、言い訳がましく正当化しているという。

「政治よりも、自分の周りの方が気になる」とガイさんは話す。

また、ブライアン・バーンズさんは、トランプ氏に投票するという自身の選択は変わらないと語る。メディアはロシア疑惑に関する報道にあまりに力を入れ過ぎており、連邦最高裁判所の判事に保守派を新たに起用したことなど、トランプ氏の功績を十分に報じていないと、バーンズさんは考えている。

オバマケア改廃案を通過させないなど「下院と上院の共和党議員が数多くの問題を起こしているが、彼(トランプ氏)はできる限りのことをやっていると思う」とバーンズさんは言う。

ホワイトハウスを巡っていかに否定的な見出しが飛び交おうとも、トランプ氏のように変革させる力のある政治家は、支持者からの高いレベルの忠誠心を維持することは何ら不思議なことではないと、米国政治の専門家らは指摘する。経済が強い状況、とりわけ大統領の決断の多くがまだ軌道に乗っていない段階では、政治の風向きはそう簡単に変わることはないという。

「人々は自身が(選挙当日に)行った選択にまだこだわっている」と、バージニア大学政治センターのラリー・サバト所長は指摘。「少なくとも今はまだ、自分が間違っていたことをは認める気にはなれない」

また、まだ断定するには時期尚早ではあるものの、支持者の間のトランプ離れは、同氏の再選のチャンスを確実に損ねるとの見方を、米選挙政治の専門家であるブルッキングス研究所のエレイン・カマーク氏は示した。最も重要な問題は、昨年トランプ氏がかろうじて勝利した激戦州で支持を失うかどうかだ。

「こうした失望したトランプ支持者がカリフォルニア州にいるのであれば、問題にならない」とカマーク氏。「ウィスコンシンやミシガン、あるいはペンシルベニアの各州に住む支持者なら、話は違う」

ロイター/イプソス調査は英語で、全米を対象にインターネット上で実施。信頼区間は5パーセンテージ・ポイントだった。

7月11─12日に実施された調査では、サンプル数1296人で、そのうち541人がトランプ氏に投票した有権者だった。5月10─15日の調査のサンプル数は1206人で、そのうち543人がトランプ氏に投票していた。両調査において、イプソスは、米国勢調査局の調査などから得られた有権者情報を考慮した。

(Chris Kahn記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中