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トランプ新大統領がTPP脱退表明、「米国第一主義」推進へ

2017年01月21日(土)10時34分

 1月20日、トランプ氏が第45代米大統領に就任した。写真はワシントンの連邦議事堂で同日撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 20日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏は20日、米連邦議事堂で開かれた式典で宣誓し、正式に第45代米大統領に就任した。就任演説では、国内外で「米国第一主義」の政策を推進すると表明した。

トランプ大統領は、米国民に対し「今この時はあなたがたのものだ」とし、「ワシントンからあなたがたに権力を取り戻す」と述べた。

その上で「きょうから新たなビジョンがこの地を統治する。これからは米国第一主義だけだ」とし、雇用の国外流出で苦しい立場に追い込まれた中間層の底上げを目指すとした。

米国はこれまで国内企業を犠牲にして外国企業を豊かにし、他国軍に資金援助する一方で米軍を疲弊させ、海外での巨額支出で米国内のインフラ老朽化を招いたと指摘。

「中間層の富は奪われ、全世界へと再分配された」とし、こうした状況に終止符を打ち、「通商、税制、移民、外交に関するすべての決定は、米国の労働者と家庭に恩恵を与えるものにする」と言明した。米国製品を買い、米国民を雇うという2つのルールが政策の原則となるとした。

トランプ新政権は就任式直後、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉へのコミットメントも明らかにし、カナダとメキシコが米労働者への公正な取り決めを拒むようであれば、NAFTAからの離脱も辞さない構えを示した。

またオバマ政権時代の気候行動計画を含む環境問題をめぐる構想を撤廃する方針を表明。米国の石油・ガス生産増加に向けた取り組みが、「道路や学校、橋などの公共インフラを修復するための」歳入拡大に寄与するとした。

外交政策は、イスラム国(IS)など「イスラム過激派テログループ」打倒を最優先の目標とすると表明した。

ただ、首都ワシントン周辺では、トランプ氏の大統領就任に反対する大規模な抗議活動が行われ、一部ではデモ参加者が暴徒化。深く分断された米国の現実を浮き彫りにした。

一部は警察と衝突。石や瓶を投げつけるデモ参加者に対し、警官は催涙ガスや衝撃手りゅう弾で応戦した。市内のある場所では、警察車両の窓に物が投げつけられたり、バンク・オブ・アメリカの支店やマクドナルド店舗の窓が破壊されたりした。

警察によると、少なくとも217人が逮捕され、警察官6人が負傷した。

市内各地で起きた抗議活動は、就任式が行われた連邦議会議事堂からホワイトハウスに至るパレードの通り道であるペンシルベニア通りからわずか数ブロック程度しか離れていない。さまざまなデモ隊が、「トランプは大統領ではない」「人種差別主義者を再び震え上がらせろ」といった反トランプのスローガンを叫びながら抗議した。

「トランプは上から止められるのではない。人々が立ち上がり、下から止められるのだ」と、サンフランシスコ出身の元教師の男性(69)は語った。「国籍や宗教や肌の色を問わず、私たちはこの国にいる皆の権利を擁護し、人として尊重する。この男は誰にも敬意を払わない」

一方、煙がくすぶるごみ箱が積まれた近くで、友人たちと心配そうに立っていたトランプ支持者の男子学生(21)は、「デモが起きると思っていたが、暴力的なものになるとは予想していなかった」と述べた。

抗議活動はロサンゼルスのほか、東京、ロンドンなどの海外都市でも行われた。一方、関係改善を期待するロシア国民はトランプ氏の大統領就任を祝福した。

*内容を追加します。

ロイター
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