ニュース速報

ワールド

中東・北アフリカ経済、戦争と原油安が成長下押し=世銀報告書

2016年02月05日(金)15時16分

 2月4日、世界銀行報告書は、2015年の中東・北アフリカの経済成長率が2.6%にとどまるとの見方を示した。写真はチュニジア・カスリーヌ県で若者が求職デモを行った建物周辺で1月撮影(2016年 ロイター/)

[ワシントン 4日 ロイター] - 世界銀行は4日公表した報告書で、2015年の中東・北アフリカの経済成長率が2.6%にとどまるとの見方を示した。戦争やテロリズム、原油安が下押し要因となり、10月に示した2.8%の見通しを下回ったという。

報告書によると、シリアで5年間続く内戦や周辺国にその影響が及んだことで、2007年物価ベースで約350億ドルの生産量が失われた。これはシリアの同年の国内総生産(GDP)に相当する。

原油価格急落によって産油国は大きな打撃を受け、歳入が落ち込んで財政赤字が拡大している。世銀によると、サウジアラビアの公的債務は2017年にGDP比で20%に達する見通し。2013年の同2.2%の10倍となる。

「この地域で最も豊かな産油国であるサウジやカタール、クウェート、アラブ首長国連合(UAE)は巨額の準備金があり、数年間は赤字に耐えられるが、それ以降は難しいだろう」と報告書は指摘した。

世銀が示した試算によると、シリア内戦の被害が大きい6都市(アレッポ、ダルア、ハマ、ホムス、イドリブ、ラタキア)だけで、住宅、医療、教育、エネルギー、水、輸送、農業インフラなどに35億─45億ドルの物的損害が発生しているという。

同じく戦闘が起きているイエメンでも、首都サヌアなど4都市の損害額は40億─50億ドルに上ると推定される。

また、人的資源への被害は一段と深刻だとの見方を示した。

報告書をまとめた世銀のエコノミストは「シリア、イラク、リビア、イエメンで和平が成立すれば、原油生産量の急回復につながり、財政状況や経常収支の改善とともに中期的な経済成長を後押しし、周辺諸国にプラスの波及効果をもたらすだろう」との見方を示した。

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米労働生産性、第1四半期速報値は0.8%低下 約3

ビジネス

米新規失業保険申請1.3万件減の22.8万件、予想

ワールド

中ロ首脳、「鋼の友情」確認 米国の影響力に断固対抗

ビジネス

英中銀、0.25%利下げ 関税が成長・インフレに影
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 4
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 9
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 10
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中