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焦点:米イラン攻撃後にドル急騰、安全資産の地位を再確認

2026年03月03日(火)11時36分

米ドル紙幣。2025年5月撮影のイメージ写真。REUTERS/Dado Ruvic/Illustration

Saqib Iqbal Ahmed

[ニ‌ューヨーク 2日 ロイター] - 米ドルは米国とイスラエルによるイラ‌ン攻撃後に急騰し、世界的な安全資産としての機能を維持していることが再確認された。​中東で地政学的緊張が高まる中、ドルは危機における伝統的な役割を取り戻している。

ドルは、昨年のトランプ関税をきっかけとした世界的な金融市場急落の際に上昇せ⁠ず、安全資産としての役割に懐疑的な見方が​台頭。この数カ月は、ストレスがかかった局面で反射的な買いが入るのかについて疑問視する声が高まっていたが、米によるイラン攻撃では安全資産としての需要が回復した。ドルは2日に全面高となり、ドル指数の上昇率は約1%と7カ月ぶりの大きさとなった。

スコシアバンクの為替ストラテジスト、エリック・テオレ氏は「本日は、ドルの動きだけを見れば典型的なリスク回避の一日だったと言える」と述べた。その上で、「(トランプ米大統領が輸入品に対す⁠る「相互関税」を発表した)解放の日は、われわれがこれまで参考にしてきた過去の事例や歴史的パターンとは明らかに異なる展開だった」と振り返った。

トランプ氏が昨年4月2日に「相互関税」を発表したときには金融市場が世界的に急落し、⁠ドルも売ら​れた。

ドルはこの数カ月、長年にわたる安全資産としての地位がユーロや円、あるいは金(ゴールド)によって脅かされていただけに、今回の動きはドルにとって歓迎すべき安心材料になった。

アナリストによると、ドルを支えたのは米市場の規模と厚みだ。

スコシアバンクのテオレ氏は「リスクを圧縮し、しかもそれを大規模に行おうとするなら、その資金フローを吸収できるのは米国債市場しかない」と述べた。

デンバーにあるマーサー・アドバイザーズの最高投資責任者(CIO)、ドン・カルカニ氏も「代わりになる通貨がほとんどない以上、市場の変動が激しいときに投資家がドルから離れるのは難しい。だからドルが依然と⁠して安全資産として機能しているのを見ても、それほど驚きはない」と話した。

<安全資産としての魅力は‌維持>

昨年の市場混乱時にドルが安全資産として資金流入を取り込めなかったのは、主として米国自身がリスクの発信源だったためだとアナリ⁠ストはみてい⁠る。世界的な売りを引き起こした原因は米国の関税攻勢であり、投資家の間では、不確実性を生み出している国の通貨に逃避しようという意欲は低かった。

調査会社マクロ・ハイブのベンジャミン・フォード氏は「解放の日によってドルが中心的な通貨として占めていた地位が揺らぎ(中略)投資家は米以外の市場を選好するようになり始めた」と説明。「しかし、今回の『オイルショック(石油危機)』で世界中の投資家がこの3カ月追いかけていたポジションから一斉に逃げ出し、結果‌としてドル買い持ちの状態に落ち着いた」と指摘する。

BNYの米州マクロストラテジスト、ジョン・ヴェリス氏は、投資家が米​国内発のショ‌ックを懸念していたときには、ドルの安全資⁠産としての魅力は傷ついたかもしれないが、国際的な地政​学危機の場合にはその魅力が維持されているようだとして「本日の状況を見る限り、そう言っていいだろう」と述べた。

<懐疑派も存在>

それでも、あらゆる状況でドルが常に強固な安全資産であり続けるとの見方に疑いの目を向ける向きもある。

ラボバンクの為替戦略責任者ジェーン・フォーリー氏は、「本日の動きは、ドルが依然として安全資産としての特性を持つことへの安心感を与えるだろう。だが、この議論はまだ終わっていないと思う」と話す。

2日の市場でドルは、安全資産購入目的の資金流入だけでなく、米‌国がエネルギー純輸出国であることにも支えられた。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの通貨担当シニア・ポートフォリオ・マネジャー、アーロン・ハード氏は、ドルがエネルギー関連のショックでもなく、流動性不安と​も関係のない局面で同じように力を発揮できるかどうかには懐疑的な立⁠場だ。ハード氏は「単なる景気不安といった一般的な恐怖が広がるだけなら、ドルの(安全資産としての)効果はずっと弱くなると思う」との見方を示す。

ハード氏は、米国の巨額な財政赤字、ころころと変わる政策、そして世界的に米資産へのエクスポージャーが高いことを踏まえると、大きなショッ​クに見舞われた際にドルは平均的にみてリスク資産との相関をより高めると予想している。

マクロ・ハイブのフォード氏は、より短期的には、ドルの行方は原油価格の動向に左右されるとして「原油高・リスク選好低下の世界が続くなら、ドルは引き続き買われるだろう」と分析。しかし、「原油価格が下落すれば、典型的な安全資産が再び前面に出てくる可能性がある」との見方を示す。その場合はスイスフランや円が有利になるとみている。

ロイター
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