アングル:無人タクシー「災害時どうなる」、カリフォルニア州停電で見えた課題
ニューヨークのマンハッタンを走行するウェイモの自動運転タクシー。11月26日撮影。REUTERS/Brendan McDermid
Abhirup Roy
[サンフランシスコ 27日 ロイター] - 米西部カリフォルニア州サンフランシスコでは20日に発生した大規模停電により、市内の交差点のあちこちで米情報技術(IT)大手アルファベット傘下ウェイモの無人の自動運転タクシー(ロボタクシー)が立ち往生して交通が混乱した。そのため自動運転車の運営会社は地震や洪水といった大規模な緊急事態に対応する準備が整っているのかどうか、懸念が広がっている。
ウェイモのロボタクシーはサンフランシスコ市内では普通に目にする。しかし20日にカリフォルニア州電力大手PG&Eの変電所で火災が発生し、市内の約3分の1で停電が起きて信号機が停止すると、ロボタクシーがハザードランプを点灯させたまま交差点で動けなくなっていたことが、ソーシャルメディアに投稿された動画で確認された。ウェイモは運行をいったん停止し、翌日に再開した。
ロボタクシーはテスラやアマゾンのZoox(ズークス)などが複数の都市でサービス拡大を競い、初期段階ながら急成長しているが、今回の一件で業界に対してより厳格な規制を求める声が新たに湧き起こっている。
カーネギーメロン大学のコンピューター工学教授で自動運転技術の専門家であるフィリップ・クープマン氏は「停電への対応を誤った場合に、規制当局が地震シナリオへの適切な対処を何らかの形で証明するよう要求しないのは職務怠慢だ」と話す。
ウェイモは23日の声明で、同社のロボタクシーは信号機が停止した交差点を全方向一時停止の十字路として扱うよう設計されているが、場合によっては確認を求めることがあると説明した。20日は停止した信号7000カ所余りを車両が問題なく通過したものの、「停電によって確認要求が急増したため対応が遅れ、すでに発生していた渋滞を悪化させた」という。
ロボタクシー運営各社は、人間による遠隔アクセスの「テレオペレーション」をさまざまな度合いで導入して車両を監視・制御している。例えばウェイモには人間で構成された対応チームがあり、自動運転技術の「ウェイモドライバー」が特定の状況に遭遇した際に代わって対応する。
しかしこうした遠隔支援システムには限界がある。ジョージ・メイソン大学の自律性・ロボティクスセンター所長で、米国の道路安全規制当局元顧問のミッシー・カミングス氏は、今回のウェイモの停止事例によってロボタクシー運営会社がこうした技術をどう使うのかを規制する必要性が浮き彫りになったと話す。
カミングス氏によると「遠隔運用の本来の目的は、システムが本来の反応を示さないときに人間が対応するという点にある。連邦政府は遠隔運用を規制すべきだ」という。同氏は「何らかの壊滅的な不具合が起きたときには、遠隔運用で確実にバックアップできるような態勢を整える必要がある」と語った。
ロボタクシーの試験および商業展開を規制・許可しているカリフォルニア州車両管理局(DMV)とカリフォルニア州公共事業委員会は今回の事案を調査している。DMVは、緊急対応に関連する措置についてウェイモや他の自動運転車メーカーと協議している。遠隔ドライバーが「安全性、説明責任、対応力の高い基準」を満たすことを確保するための規制を策定しているという。
<警告射撃>
完全自動運転車は、技術の安全性を確保するために多額の投資が必要なほか、衝突事故後の世論の反発で多くの企業が事業停止に追い込まれるなどしており、その導入と商業化は予想以上に困難であることが分かってきた。
23年にはゼネラル・モーターズ(GM)傘下クルーズのロボタクシーが歩行者を引きずるという事故が発生。規制当局が事業免許を取り消し、最終的に同社は事業を停止した。
それでもテスラが今年初めにテキサス州オースティンでサービスを開始し、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が急速な事業拡大を打ち出したことで、ロボタクシーは再び脚光を浴びている。09年にグーグルの自動運転プロジェクトとして始まり、ゆっくり着実に成長してきたウェイモも、拡大のペースを速めている。
2500台を超える車両を抱えるウェイモは、サンフランシスコのベイエリア、カリフォルニア州ロサンゼルス、アリゾナ州フェニックス都市圏、テキサス州オースティン、ジョージア州アトランタでサービスを展開している。
ウェイモは、車両に運行を指示する確認プロセスは初期の配備段階で確立されたもので、今の規模に合わせ改良を図っていると説明。「特定の停電状況」を車両に伝え、「迷うことなく走行できる」ようにシステムを改めているという。
カミングス氏とクープマン氏は、運行する自動運転車両が一定の規模を超えた運営会社には、大規模障害に対処する十分な能力を持たせるため追加の認可要件を課すべきだと主張する。
クープマン氏は「これが地震だったら大きな問題になっていただろう。今回は、本格的な危機を前にした警鐘にすぎない」と述べた。





