アングル:米レポ市場、年末の資金調達不安が後退 FRBの対策が奏功
写真は2012年4月、米ワシントンの連邦準備理事会(FRB)本部で撮影。REUTERS/Joshua Roberts
Gertrude Chavez-Dreyfuss
[ニューヨーク 17日 ロイター] - 米債券市場は、例年よりも資金繰りへの不安が少ない状態で年末を迎えようとしている。連邦準備理事会(FRB)が打ち出した最新の資金供給策が、銀行による短期資金の貸出抑制で生じる季節的な資金需給逼迫を和げるとの見方が強まっているためだ。
短期市場金利は通常、四半期末や年末の期越えの時期に急騰する傾向がある。銀行が自己資本の管理やバランスシートの強化を優先し、貸出を控えて手元資金を温存するためだ。
昨年末のレポ金利は前年の平均を上回って推移し、不安定な動きを見せた。2019年9月にも、法人税の納付と債務返済が重なり、銀行の準備金が大幅に減少しレポ金利が跳ね上がった経緯がある。
ただ、今年のレポ市場では、先週のFRBの発表を受けて、越年金利(12月31日─1月2日)が急低下している。FRBは、適切な資金水準を維持し、政策金利を確実に目標レンジ内に維持するため、短期国債(Tビル)を買い入れる方針を示した。
この「準備金管理購入(RMP)」と呼ばれる措置により、FRBは当面、月額約400億ドルのTビルを購入する。
BNYの市場マクロ戦略責任者、ボブ・サベージ氏は「FRBは納税日や年末に金利を急騰させず、翌日物金利を維持したいと考えている」とし、「私は19年のように市場の注目を集めるような12月31日の大混乱を予想していない。FRBは適切なツールを備えている」と述べた。
FRBは先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決定した際、今回の措置を発表した。
月額400億ドルのTビル購入は、10月のFOMCで公表された「住宅ローン担保証券(MBS)の償還金のうち150億ドルをTビルに再投資する」という方針に上乗せされる。アナリストは、こうした一連の買い入れが年末特有の資金調達圧力を和らげるとみている。
FRBによる購入拡大で、民間投資家が26年に購入するTビルは大幅に減るとみられ、Tビルの価格上昇と利回り低下につながる可能性がある。レポ金利急騰の一因となってきた国債の供給圧力を和らげることにもなる。
<期越えプレミアムの低下>
市場関係者によると、12日時点で越年の一般担保(GC)レポ金利は4.10%と、2週間前の4.25%から低下した。現在の実効フェデラルファンド(FF)金利(3.64%)を依然、約46ベーシスポイント(bp)上回っている。
カーバチュア・セキュリティーズのエグゼクティブ・バイスプレジデント、スコット・スカイアム氏は「実際に金利が低下しているという心理的要因に加え、FRBによるTビル買い入れの確約が支えとなった」と話す。
「今年のレポ市場は担保が格段に多く、ボラティリティーも高いため、この時点でスプレッドが広いのは妥当だ。月末に近づくにつれて、スプレッドは縮小するだろう」とも指摘した。
短期金融市場は期越えの時期に不安定になることがある。19年9月には日中のレポ金利が10%に達し、FRBが日々の市場操作を通じて巨額の資金供給を余儀なくされた。一方、コロナ禍の緩和局面だった20年や21年の年末は1%を下回る水準で推移した。
今年のレポ金利低下は、資金需給の改善を示唆しており、市場参加者がバランスシートへのストレスがこれまでよりも少ないと予想していることが窺える。
もっとも、16日のGCレポ金利は3.72%と、準備預金への付利(IORB)の3.65%をわずかに上回った。これはFRBにとって懸念要因だ。翌日物金利が高ければ、銀行は資金をFRBに預けるより、レポ市場で運用しようとするためだ。
一般に金融機関は、準備金が多いほど資金調達のストレスが減り、支払い、追加証拠金の差し入れ、引き出しに余裕をもって対応できる。
JPモルガンの短期デュレーション戦略責任者、テレサ・ホー氏は「金利水準は依然として高めではあるものの、これまでのところ、レポ市場は秩序立っている」と指摘。「年末に向けた準備が活発化している。多くの銀行が事前に準備すれば、その分、年末は波乱のないイベントになるだろう」と述べた。





