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アングル:総強気の日本株、個人もトレンドフォロー 天井近い「陶酔」とも

2025年10月20日(月)18時56分

 10月20日、東京株式市場は日経平均が史上最高値を更新し、初の4万9000円に乗せる大商いとなった。都内の株価ボード前で同日撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Noriyuki Hirata

[東京 20日 ロイター] - 20日の東京株式市場は日経平均が史上最高値を更新し、初の4万9000円に乗せる大商いとなった。米株高に加え、高市早苗首相の誕生が確実な情勢になったことから買いが膨らんだ。普段は逆張りの個人投資家も買いに動く総強気の様相だ。一方、需給面からは、強気相場が終盤の「陶酔」局面に入ったサインをかぎ取る向きもある。

「高市首相誕生で、いったんは出尽くしになってもおかしくない」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは指摘する。

日経平均は9―10月で11%超、4800円の急騰をみせた。背景のひとつは、自民党の高市総裁の政策への期待だ。米国の利下げ観測による米株高もあって上昇に勢いがついた。政局混乱を経つつ、あすには首相指名選挙で高市氏が首相に就任する公算が高まっており、イベント面でひとまず山場を迎えることになる。

先行きの株価は補正予算や税制大綱といった「政策次第といえる」と藤原氏はみている。定数削減にめどをつけられるか、連立政権の運営がスムーズにいくかどうかも重要となり、政権支持率の動向にも目配りが必要になる、という。

<日経平均は「最後のブースト」か>

日経平均が1600円高と急上昇したこの日の相場を受けて、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「(日経平均は)最後のブーストを吹かしているのかもしれない」と指摘する。ひとつには、松井店内の信用売り残の動向だ。

信用売り残の直近のピークは10月9日で580億円だったが、17日時点で492億円へと2割ほどに減少した。売り方が損失を覚悟で買い戻し株高に弾みをつけたとみられるほか、普段逆張りの個人が順張りに回り、きょうも減っているとみられている。一方、同期間の信用買い残は2969億円が3155億円に増えた。

個別株の手口では、逆張りの個人投資家は普段、売り越しが目立つが、この日はソフトバンクグループやアドバンテストで買い越しがみられたとして「個人が強気転換した様子がうかがえる」と窪田氏は話す。

下落時のクライマックスは、一斉に強制的な損切りをさせられるためわかりやすいが、上昇時は徐々に進行する性質があるという。市場では5万円の大台が視野に入りつつある中、買いでついていくしかないとの声は根強い。

こうした中、ネガティブ材料への反応が限られたことが気がかりとの見方もある。取引時間中には、日銀の9月会合で利上げを主張した高田創審議委員が講演で、利上げに向け「機が熟した」との見解を示したことが伝わったが、日経平均は終値がその日の高値となる高値引けで取引を終えた。

中国アリババ・グループが自社のAI(人工知能)モデルの実行で米エヌビディア製GPUの使用量を82%削減できたと伝わったことも、特段材料視されなかった。「ディープシークショック並みの影響がありそうにもみえ、米国市場での受け止めを見極める必要がある」(大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト)との声もある。

アメリカの著名投資家、ジョン・テンプルトン氏の言葉とされる「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」との相場格言がある。

悪材料への反応が乏しいことは、それほど強い地合いとみることが可能な一方、松井証券の窪田氏は「いまは『陶酔の中』に差し掛かっているのかもしれない」と話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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