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アングル:米地銀株安が日本に波及、利益確定の口実か根深い問題か

2025年10月17日(金)18時24分

 10月17日、 東京株式市場では、日経平均が一時800円近く下落するリスクオフの地合いとなった。都内の株価ボード前で4月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Noriyuki Hirata

[東京 17日 ロイター] - 17日の東京株式市場では、日経平均が一時800円近く下落するリスクオフの地合いとなった。米地銀の信用リスクに関する懸念が浮上し、米株安となったことが嫌気された。これまでのところ、個別の問題だとして利益確定売りの口実に過ぎないとの見方は根強いが、システミックリスクに発展しないか注意が必要との指摘もある。

東証33業種では銀行、保険、証券が値下がり率の上位を占め、米地銀不安が波及した様子がうかがわれた。

もっとも、日本市場では、いまのところ個別行の事案との受け止めが多い。17日の株安も、前日までの2日続伸で1400円超上昇した反動との見方だ。

自民党と日本維新の会の接近に伴う「高市・維新トレード」は「あらかた一巡した。基本的には強気マインドだが、週末でもあり利益確定したいタイミングだった」(フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッド)との声があった。

値上がり率トップは、このところ下落基調だった任天堂を含むその他製品で、循環物色の側面も意識された。米地銀の問題はリスクオフを促したものの「利益確定の口実になった面もありそうだ」(増沢氏)との受け止めもある。

足元では「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドなどの面から、現時点でグローバルな信用市場全体に波及する兆候は乏しい」とJPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストはみている。

マークイットの北米ハイイールド債CDSインデックスのスプレッドは、シリコンバレー銀行が破綻してショックが広がった際、約550ポイントだったが、足元では350ポイント程度にとどまっている。

<本格リスクオフの予兆か、市場は半信半疑>

他方で、今後のリスクオフの予兆ではないかとの警戒感もぬぐえない。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が14日、「ゴキブリが1匹いたら、おそらく他にもいるものだ。だから皆、事前に警戒すべきだ」と発言したことが話題となり、市場の猜疑心を高めている。

りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは「今のところ個別の材料にもみえるが、どこに信用不安のリスクがつながっているかわからないという漠然とした不安が売りにつながっている」と話す。

JPモルガンの高田氏も、個別の事象とみている一人だが、2007年のパリバ・ショックや2018年のVIXショック、2021年のアルケゴス・ショックなどでは「個別のリスクが理論を逸脱して市場を揺るがしてきた歴史があるため、やや気懸かり」と話す。

警戒されるのは、固有のショックを発火点に、それまでのリスクポジション集中の解消を通じた市場全体へのショックの波及だという。

米国市場では短期筋を中心にハイリスク、ハイリターンな中小型株が選好されてきたとみられている。前日の米国市場では、大型株が中心のS&P500を中小型株のラッセル2000が著しくアンダーパフォームする場合、「水面下で投機筋のポジションがアンワインドし始めている可能性がある」とJPモルガンの高田氏はみている。

同様の投資をしている世界中のファンドが損失を出せば、売りの連鎖反応が引き起こされかねないリスクがくすぶる。前日はS&P500が0.6%安だった一方、ラッセル2000は2%安だった。

機械的な持ち高調整の売りが強まるかどうか、テクニカル面でひとつの節目になりそうなのが、TOPIXの3070ポイントだと高田氏は試算している。海外短期筋の一角を占めるCTA(商品投資顧問業者)の今年6月からの損益分岐点にあたり、これを割り込む場合、CTA主導の売りが強まりかねないという。

足元の日本株市場は、短期筋が主導権を持っているとフィリップ証券の増沢氏は指摘し「方向感が変わると値幅が出やすい」と話す。

(平田紀之 編集:橋本浩)

ロイター
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